スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。
まさかの言葉に唖然としていると、彼は私と目線を合わせる。私がハテナハテナで頭の中はハテナでいっぱいになっていると、タイミング悪く電話が鳴り始めて画面には【母】と表示されていた。
咲翔さんは電話にぜひ出てほしいと私に言う。だから電話を出るボタンをタップして電話に出た。
「……もしもし、どうしたの?」
「あ、もしもし? 百々芭? あのね、この前の話なんだけど、一度お見合いしてみない? もしかしたら会えば結婚したいって思うかもしれないでしょ? だから今週末来て欲しい」
「はい? お見合いなんてしないって言ったでしょ? 結婚はまだしたくないし、それに勝手に今週末って……」
「でも、それくらいしないと百々芭は動かないじゃない。やっぱり、きっかけって大事じゃない。それに、仕事って言うけど、単なるカフェ店員なんでしょ? 女なんだし、百々芭がいなくったって変わんないわよ」
勝手なことをペラペラ話して、女は大した仕事はできないと思っている。男尊女卑がまだまだ根強く残っている田舎町の生活しか知らないから、母もそう思っているのだろうけど……
それでも、私は――と反論しようと思った時。
「百々芭ちゃん、かして」
「……っえ」
スマホは私の手から離れてあっという間に彼の手の中にいってしまい、スマホを耳にあてた。