名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
『雛未は俺がいなくても平気なんだろ?』
付き合っていた男性に別れ際、そう言われたことをふと思いだす。今から二年ほど前の話だ。
『俺と付き合ってる意味あった?』
彼は頼られたり、甘えられることで自尊心が満たされる類の男性だった。
素直に人に甘えられないこの性格が災いして、彼とは交際して二年ほどでお別れすることになった。
長く付き合っていたし、一時期は結婚も視野に考えていた。
友人からもなぜ別れたのか、なぜ結婚しなかったのか、しつこく聞かれたくらいだ。
雛未こそ、逆に彼女らに問いかけたかった。
――結婚しないと幸せになれないの?
結婚しなければ幸せになれないのならば、未婚だった母は不幸だったのか?
そして、未婚の母から生まれた雛未も?
雛未の中には幸せな結婚のイメージがない。
生まれた時からひとり親だったせいか、一般的な家庭像を思い描くことすら難しい。
田舎では行き遅れと揶揄される年齢まで未婚だったのはそのせいかもしれない。
しかし、結婚を頭から否定する一方で、雛未は祐飛との生活にどこか安らぎを感じていた。