名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
これまで、何でもひとりでこなしてきた。
電球の付け替えも、テレビの配線も、母親の葬儀でさえも、他人の手を借りなかった。
誰かに助けてもらおうなんて――助けてもらえるなんて微塵も思っていなかった。
けれど、世の中にはどんなに頑張ってもひとりで解決できないことがたくさんある。
ベリが丘病院に潜入できたのは、間違いなく祐飛のおかげだ。
その上、彼は雛未の秘密の半分を背負ってくれた。
(祐飛さんが優しいことなんて、わざわざ言われなくても知ってるし!)
数週間前のドヤ顔の聖を思い出し、つい反論する。
雛未は何度祐飛に救われたかわからない。
得体の知れない雛未を受け入れ、家族になってくれた。
無愛想で、素っ気ないくせに、雛未のことをよく見て気にかけてくれる。
彼がいなければ雛未はきっと今ごろ、故郷の家の中でひとりぼっちで泣いていた。
なんでもひとりでできると意地を張っていただけで、本当は心置きなく誰かに甘えてしまいたかったのかもしれない。
――だからこそ怖かった。
祐飛に依存してはいけないとわかっているのに、彼が傍にいると雛未は……。
ぎゅうっと拳を握りしめたその時、入口の扉が控えめにノックされた。
ワインのおかわりが届いたのだと思い込み、雛未は何の警戒心もなく扉を開けてしまった。
……そして、息を呑んだ。