名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
6.覚醒

「雛未さん、大丈夫ですか?今日は寝不足ですか?」

 この日、何度目かわからない欠伸を噛み殺していた雛未は、瞬時に口を閉じた。

「ごめんね!次から気をつける」

 腑抜けた顔を晒していたことを反省し、雛未は気を引き締めた。

(恥ずかしい……!)

 花火の日以来、すれ違い生活が続いたせいか、久し振りに祐飛に抱かれた昨日はなんだか離れがたくて。
 うっかり「もっと」とこぼしてしまったら、祐飛もその気になってしまい、昨夜は時間の許す限り身体を重ね合ってしまった。
 もっと若い時ならいざ知らず、アラサーのこの歳になって情事にふけるなんて、完全に色ボケている。

 恥ずかしそうに黙りこくった雛未に艶めいた事情を察した茉莉は、ニマニマしながらからかい始めた。

「いいなあ、新婚さんは!私もマチアプでもやろーかなー」
「ち、ちがっ!」

 どうやら浴衣を借りた日以来、茉莉の中で雛未達は相思相愛の熱愛夫婦というのが定着してしまったらしい。
 うなじの赤い痕を見られてしまった後では、どんな言い訳も虚しい。

(もう!これも全部祐飛さんがむっつりスケベなのがいけないんだから!)

 雛未は赤く染まった顔を隠すように、俯き加減で仕事に没頭した。
 入院予定の患者の事務手続きを前倒しで終わらせて、請求書の作成に取り掛かろうとしたその時、カウンターの前にあるエレベーターの扉が開いた。  
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