名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「なあに雛未さんが悪いことはないよ。そろそろ家に連れてきなさいといっているのに、祐飛がもったいぶるのがいけない」
「もったいぶっているわけではありません。予定が合わなかっただけです」
「誤魔化すんじゃあないよ」
「……本当に忙しいんです」
父親に不手際を叱責され、祐飛はかなり困っていた。珍しい光景だ。
「まあ、いいさ。あれだけ結婚は面倒だと渋っていた祐飛が家庭を持つ気になったんだ。実に喜ばしいことだ」
院長は景気づけに祐飛の背中をバシンと二回叩くと、雛未に笑顔を向けた。
「祐飛と結婚してくれてありがとう、雛未さん」
「あ、いえ……。私こそ……」
結婚によるリターンが多いのはどちらかといえば雛未の方だ。義父から労わるように優しく声をかけられ、雛未は恐縮した。
「あの祐飛がなんとも言えない嬉しそうな顔で弁当を食べていたくらいだからね。よっぽど家庭の居心地が良いんだろう」
「適当なことを言わないでください」
「照れるなよ。この間だって食事に付き合えと言ったのに、そそくさと先に帰っていったじゃないか」
「やめてください」
「ほらこれだ」
院長は祐飛の困り顔をからかい、ひとりゲラゲラと笑った。
軽快なやり取りの中に、二人の信頼関係が見え隠れする。