名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「愛想のない息子で悪いけれど、これからもよろしくね。次はうちの妻と四人で会おう」
「はい」
「じゃあ、僕は先に病室に行っているから」

 大病院の院長とは思えない軽快なステップを踏みながら、オートロックの扉を潜り抜けていった。

「祐飛さんのお父さんって……とても面白い方ですね?」
 
 義父との初対面を終えた雛未は慎重に言葉を選び、祐飛に話しかけた。
 祐飛の父親をひと言で表すならば『変人』という単語がピッタリだった。

「だから会わせたくなかったんだ」

 祐飛は疲れ切ったようにはあっと息を吐き出し、眉間を指で押さえた。
 祐飛の頭が上がらないことも含め、面白い人だ。

「親父の言ったことは全部忘れろ」

 祐飛はやれやれと首の後ろを掻きむしりながら、院長の後を追っていった。

(もしかして……照れてるのかな?)

 だとすれば、院長が言っていたことは全て事実ということになる。

(忘れるわけないですよ?)

 弁当を持たせた日の夜、弁当箱は空になって戻ってきたが、祐飛から感想を言われることはなかった。
 やはり迷惑だったのかと思っていたところに、院長からの嬉しいタレコミがあった。

「ふふっ」

 本当は喜んでくれていたんだと知り、雛未の口から自然と笑みが溢れた。

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