名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「この頃、目を逸らされたり、避けられたりすることが多かった」
「そ、れは……」

 貴方への恋心を自覚したからですとは、口が裂けても言えなかった。
 雛未は挙動不審になっていた理由を答えるのを避けるように、逆に祐飛に尋ねた。
 
「なんでバッグなんですか?」
「親父が母親を怒らせた時は、大体バッグを買わされていた」

 理由を聞いて、思わずガクンと身体の力が抜けていく。
 つまり、祐飛は花火に遅れてきた罪滅ぼしにバッグを買おうとしているのだ。馬鹿馬鹿しい。
 院長夫婦の力関係はともかく、バッグを買えば機嫌が直ると思っていることは、ある意味微笑ましい。

「祐飛さんの仕事はそういうものだってわかってましたし……。お店の方には本当に申し訳ないんですけど、バッグもいりません」

 高いバッグを買ってもらっても、使い所がない。
 クローゼットで眠ったままにするくらいなら、他のベリが丘レディーに買われた方がバッグも嬉しいだろう。

「そうか?」

 バッグの購入を見送られてしまった祐飛は、雛未の発言の真意を疑いしきりに悩んでいた。
 雛未は堪えきれずに吹き出した。
 心配しなくても二人きりで出かけること自体が、雛未にとってはご褒美みたいなものだ。

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