名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
ブランドショップを後にした二人は、ショッピングモールの中を再び歩き始めた。
「すみません。わざわざ連れてきてもらったのに」
「……機嫌が直ったならいい」
雛未の機嫌を気にするなんて、祐飛にも可愛いところがある。
愛情はないかもしれない。でも、誠実であろうとしてくれる。
それだけで今の雛未には身にあまるほどの幸せだった。
(祐飛さんと結婚できてよかったなあ……)
ほわほわと幸せに浸っていた雛未は、すっかり周囲への警戒が疎かになっていた。
駐車場まで戻ろうと通路を歩いていた時、不運に見舞われる。
先を歩いていた祐飛が急に立ち止まり、その背中にしたたか額をぶつけたのだ。
「いった……!もう!いきなり止まってどうしたんですか?」
雛未はぶつけた額を手で押さえながら、祐飛に怨みがましい眼で睨んだ。
「……ここで待ってろ」
「え!?祐飛さん!?」
祐飛は雛未の額のことなど一切構わず、どこかへ駆け出して行った。
置いてけぼりにされた雛未は、困り果ててしまった。
(祐飛さん、どこへ行ったんだろう……)
待ってろと言われ、大人しくベンチに腰掛け十五分ほど経つと、ようやく祐飛が戻ってくる。
買い物をしてきたのか、左手に何かぶら下げている。