名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 無事に任務を終えた雛未は、チェストの上に目をやった。
 
(純華さん、本当に飾ってくれたんだ)

 チェストの上には雛未が純華に贈ったハーバリウムが飾られていた。

 ハーバリウムは、本人の希望もあり、しばらく若狭議員の病室に置かれることになったのだ。

『お父様にも綺麗なお花を見せてあげたいんです……。ダメですか?』

 純華からお伺いをたてられた雛未は快く了承した。
 病院へ来るたびに生花を生けるのは大変だ。雛未でも力になれることがあるなら嬉しい。

(さて、戻りますか)
 
 雛未が病室から出ようとしたまさにその瞬間、ガンと何かが金属とぶつかったような音が聞こえた。

(なに今の……?)
 
 エアコンの音とも、自分の立てた足音とも違う。違和感を覚えた雛未はパッと後ろを振り返り、若狭議員のベットをじいっと見つめた。
 
(気のせい?)

 ……いや、違う。
 雛未は己の考えを即座に否定した。
 先ほどまでベッドの上にのせられていたはずの右腕が、ブランと脇に垂れさがっている。
 雛未はベッドへと近づき、さらに目を凝らした。
 ……右手がぴくぴくと動いている。

(ううん!間違いない!)

 雛未は枕元のナースコールを鳴らした。

「すみません!患者さんが!」

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