名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(何か……何か言わなくちゃ……!)
離婚が不合理である理由を必死で考えたが、どうしても思いつかなかった。
黙りこくってしまった雛未に、祐飛はしばしの猶予を与えた。
「急に色々言われて混乱しているだろう。返事は急がない」
「……はい」
話が終わると、祐飛はシャワーを浴びに浴室へ向かった。
雛未はしばらく椅子から立ち上がれないでいた。
正直、ショックだった。
若狭議員が目覚めないかもしれないことよりも、祐飛に離婚を切り出されたことの方が何倍も。
(祐飛さんは次の相手を探せばいいだけだもの……)
たとえ雛未がベリが丘からいなくなっても、祐飛は困らない。
もともとノースエリア出身の祐飛との結婚は分不相応だった。
雛未ののっぴきならない事情と、祐飛の女難の相が上手く掛け合わされただけの偶然の産物だ。
祐飛にとってこの結婚は簡単に手放してしまえるようなものだったのだ。
(最初からわかっていたことじゃない……)
その日の夜、雛未は一睡もできずに朝を迎えた。