名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
翌朝、雛未はカウンターで茉莉と顔を合わせるなり、深く頭を下げた。
「昨日は大騒ぎしてごめんね、茉莉さん」
「いいえ!雛未さんが大声で怒鳴るなんて珍しいなとは思いましたけど」
茉莉は何でもないことのように、明るく振る舞ってくれた。
(看護師の皆さんにも謝りにいかなきゃ……)
ナースコールの後、病室にやってきた看護師達は雛未の話を半信半疑の様子だった。
指が動いていたのはほんの僅かな時間で、看護師達が到着した時には反応が消失していたからだ。
その結果、看護師達は雛未の訴えに緊急性はないと判断した。
『次の診察の時間に不破先生に伝えておきますから……』
『いいえ!今すぐここに呼んでください!』
『ですから……』
『患者さんに何かあったらどうするんですか!早く!』
雛未は看護師の態度に焦れ、今すぐ祐飛を呼んで欲しいとナースステーションの前で言い張ったのだ。
結局、根負けした看護師達は祐飛を特別室まで呼んでくれた。
(今思えばやりすぎだったなあ……)
あとになって雛未は己の差し出がましい行動を反省した。
何の医療知識もないただの事務員のくせに、看護師の領分を侵した雛未のことをよく思っていないはず。