名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「昨日はお騒がせしてすみませんでした。よろしかったらこのお菓子、召し上がってください」
「あ、ありがとう……ございます……」

 雛未から紙袋を受け取ると看護師の皆さんは一様に引きつった愛想笑いを浮かべた。
 雛未はクルリと踵を返し、受付へと戻るべく廊下を歩いた。
 ナースステーションから背を向けた途端、とってつけたような笑みが一瞬にして消える。

(ずっと、疑問に思ってた……)

 どうして雛未の話をあっさり信じてくれたのか。
 結婚願望のなかった祐飛が結婚しろと提案してきたのか。
 出逢って間もない雛未を、夜ごと掻き抱いて寝るのか。
 雛未に純華の面影を重ねていたとしたら、すべての辻褄が合う。

(私は……純華さんの代わり?)

 純華は聖と結婚してしまった。
 二人が仮面夫婦だとしても、婿としての地位を確立しつつある聖と純華が離婚する確率は低い。

 祐飛は最初から雛未が純華と異母姉妹だという確信を持っていた。
 腹違いの姉妹なら、代用品としては悪くない出来だ。
 一生手に入ることのない純華を想い苦しむくらいなら、代用品で手を打とうとした?

(叶わぬ恋に疲れた?それとも、報われなくて絶望した?)

 それとも、代用品を求めてしまうくらい、純華のことが好きだった?

 自分が純華の代わりだと知り、悲しみと絶望が幾重にも、雛未に襲いかかってくる。
 しかし、祐飛を最低だと罵る資格はない。
 だって、彼は父親に会ってみたいという雛未の希望を叶えてくれたのだから。

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