名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(祐飛さん、まだ帰ってこない……)
仕事を終えマンションに帰ると、雛未は祐飛の帰りをひたすら待っていた。
五ヶ月ぶりに目覚めた若狭國治がどんな様子なのか気になって仕方なかったからだ。
しかし、待てど暮らせど祐飛は帰ってこない。
いつの間にかうつらうつらと船を漕ぎながら寝てしまっていた雛未は、玄関の扉が閉まる音でハッと目を覚ました。
寝ぼけ眼を手で擦り、玄関へと走る。
「おかえりなさい!」
「起きてたのか?」
「あ、あの……!若狭議員は……」
「まだ、なんとも。詳しい検査はこれからだ」
祐飛が帰宅したのは空が白み始めた明け方のことだった。
祐飛は雛未の頬についた手の跡をそっと撫でた。
「寝ないで待っていたのか?」
「気になったから……」
「今日も仕事だろう?出勤の時間まで寝ておけよ」
祐飛は雛未を寝室に連れて行き、ベッドに寝かせた。
しかし、布団をかけられ目を瞑っても、意識が高ぶって眠れそうにない。
「眠れないのか?」
祐飛が枕元に腰掛け、雛未の頭を撫でていく。
子供を寝かしつけているようにあやされると、次第に眠気が訪れる。
(こんな時まで……)
たとえ、純華の代わりだとしても、身体を気遣い優しくされると嬉しかった。
愚かな恋心は分別がない。
(怖い……)
若狭議員が目覚めるのをずっと望んでいたのに、いざその時がやってくるとなんだか恐ろしくなってきた。
真実がいつだって雛未の望むものとは限らないのだ。
現に、祐飛が雛未との結婚を望んだ理由は、受け入れ難いものだった。
雛未は無意識の内に、祐飛の手を強く握りしめていた。