名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「今朝の新聞をお持ちしました」
「ありがとう」
若狭議員は新聞を広げると熱心に目を通し始めた。
若狭議員が目覚めてから、停滞していた政治の世界は少しだけ変わった。
健康上の理由により政界を引退することが正式に発表されたのだ。
既に解任されていた副総理の地位に加え、ありとあらゆる役職から退いた。
病から不死鳥のごとく復活したものの、麻痺の残る身体では政界復帰は難しい。決断は潔かった。
今や彼は国会議員ではなくなり、ただの『若狭國治』となった。
近々、空いた議席を埋めるための補欠選挙が行われる見込みだ。
國治が築き上げた選挙地盤は、既に娘婿の聖へと引き継がれている。
國治が倒れてから若狭家の娘婿として、十二分に務めを果たしてきた聖の当選は、公示前から約束されたようなものだ。
政界のトップを駆け抜けた彼の余生は、穏やかなものになるだろう。
……雛未がこのまま何も告げなければ。
「他に何かありましたら、カウンター直通の電話をご使用ください」
雛未はそう言うと、國治の病室を後にした。