名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 雛未はやっとの思いで観光案内所を見つけると、カウンターに座る職員にベリが丘病院までの行き方を尋ねた。
 ベリが丘病院までは路線バスが運行されていた。
 観光案内所でもらった路線図を辿ってみると、バスはベリが丘をぐるりと一周した後に病院まで行くようだ。
 病院までは歩いても十分ほどの距離と聞いたが、雛未は迷わずバスを選択した。
 悲しいことに雛未は極度の方向音痴なのだ。
 各地を経由していく分時間はかかるが、バスの方が確実だ。見知らぬ土地で道に迷ったら、目も当てられない。

 無事にバスに乗車できた雛未は、最後尾の座席に座り車窓に目をやった。
 定刻通りに出発したバスはベリが丘のシンボルである天を貫くツインタワーの前を横切り、海岸沿いにある白波を模した流線形の五つ星ホテル『ブルームーンホテル』を通り過ぎていく。

(別の世界みたい……)
 
 雛未の暮らしているのどかな田舎とはかけ離れた風景に、そわそわと落ち着かなくなる。
 バスはベリが丘のメインストリートのひとつである櫻坂を上っていく。
 そして、とうとう若狭議員が入院しているベリが丘病院へ到着した。

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