名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
再びタクシーに乗り込み聖の事務所からマンションに戻った二人は、狂おしいほどの激情に身を委ねた。
「ゆ、ゆうひさ……!」
雛未は玄関に入るなり祐飛に抱きすくめられた。雛未がここにいることを確かめるように、額、頬、目尻と次々とキスの雨が降らされていく。
けれど、律儀な祐飛は今日も唇には触れてくれなかった。それがもどかしくて、たまらない。
祐飛はジャケットを脱ぎ、雛未のブラウスのボタンを手際よく片手で外していった。
下着が露にされ、鎖骨に吐息が当たったその時、雛未は意を決して祐飛の身体を押し返した。
「あの!実は祐飛さんに言わなきゃいけないことがあって……」
「何だ?」
この期に及んで『待て』と言われた祐飛は腹立たしげに、前髪を掻き上げた。
身体から湯気が立ち上っていると錯覚するほど気が立っていて、これ以上おあずけされたら無理やりにでも服を脱がされそうだった。
……ものすごく言いづらい。でも、言わなければ。
「キス……して欲しいです」
「いいのか?」
雛未は目を伏せてコクコクと頷いた。
夫婦でいるのは期間限定。キスしたいと言ったら最後。自分の気持ちがバレてしまうと危ぶんでいた。
けれどもう、自分の気持ちを押し殺す必要はない。