名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
雛未は両腕を上げ、万歳すると、えいやと勢いをつけ生垣の境目に無理やり身体を捩じこんだ。
苦心して生垣を潜り抜けると、芝生と歩道が整備された中庭のような広い空間に出た。
先ほどの話し声の持ち主はどこかと視線を巡らせれば、少し離れたところで、華奢な女性を挟むように三人の男女が横並びで歩いていた。
(助かった……!)
左端を歩いている長身の男性は白衣を着ていた。ということは病院関係者だ。あの人に道を尋ねれば間違いない。
雛未はこれ幸いとばかりに三人の後ろを追いかけた。
こちらに背を向けているせいか、三人とも雛未の存在に全く気がつかずに話を続けている。
「祐飛がべリが丘病院にいてくれて本当によかった」
「お父様のこと、よろしくね」
「ああ、國治おじさんに何かあったら直ぐに連絡する」
会話の内容を聞いてしまったのは完全に不可抗力だ。
雛未は思わず足を止め、サッと木の影に身を隠した。
(國治おじさん?)
白衣の男性が口にしたのは、確かに若狭議員の名前だった。
盗み聞きはまずいと知りながらも、しばしの間彼らの会話に耳を澄ませる。