名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(そういうことだったのね……)
弓親の話を聞いて、ことの全容が明らかになった。
手紙が来なくなったことを不審に思った母は、身重の身体でベリが丘に戻り、演説中の國治を弓親と間違えた。
國治に冷たくあしらわれ、傷ついた母はその後、故郷でひとり雛未を生んだ。
自分の愛した人が弓親だったとは知らずに……。
手探りで始めたパズルのピースがひとつひとつ嵌っていく。
偶然が重なった悲しい恋の結末に、涙が零れ落ちそうになる。
「貴方は母を愛していましたか?」
「愛していたさ。誰よりも!」
弓親は惜しげもなく亡くなった母への愛を主張した。
――やっと真実に辿り着けた。
母はどれほど辛かっただろう。
弓親に拒絶されたと思い込み、ひとりで雛未を産み育てた。
シングルマザーとして生きると決めてから、計り知れぬ苦労もあっただろう。
けれど、母は弓親を愛し、弓親もまた母を愛していた。
雛未がこの世に産み落とされ生きていることが、なによりの証拠だった。