名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
帰り際、弓親は玄関まで雛未と祐飛を見送ってくれた。
「君さえよければ……僕とまた会ってくれないか?これもなにかの縁だ。父親と呼んで欲しいなんて贅沢は言わない」
弓親は雛未の機嫌を窺うように、控えめに尋ねた。
親子だとわかった二人には、雛未の年の数だけ隔たりがある。
一度開いてしまった距離はいくら頑張っても埋めることができないかもしれない。
それでも弓親は希望を捨てたくないと言っている。
「ひとつだけお願いがあります」
雛未が言うのは差し出がましいことなのかもしれない。
一度引き離された一卵性双生児の二人には、雛未には分からない葛藤があるのかもしれない。
けれど、言わずにはいられなかった。
「お兄さんを――國治さんを恨まないであげて欲しいです」
弓親は絶縁状態の双子の仲を取り持とうとする雛未を見て、静かに笑った。
「君は優しいね。さすが菊香の娘だ」