名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
二人は雛未が在りし日に母と歩いた海辺の遊歩道を時間をかけてのんびり歩いていった。
海は穏やかそのもので、遥か遠くまで見渡せた。
「あ、祐飛さん!大きなクルーズ船が停泊していますよ」
雛未の故郷は海から遠く、大型のクルーズ船などベリが丘に来るまでは実際に見たことがなかった。
海の上に浮かぶ船体に興奮し、指を指してはしゃいでいると、唐突に祐飛が口を開いた。
「雛未、俺と結婚してくれ」
雛未は目をパチクリとさせた。
「どうしたんですか?急に……」
結婚してくれと言われても、既に結婚しているではないか。左手の薬指にはいつか買ってもらった結婚指輪が嵌められている。
「やり直したい」
祐飛は雛未の頬を手で撫で包んだ。
海風でなびく髪を指に絡め、そっと口づける。まるで忠誠を誓う騎士のようだった。
「一生懸けて幸せにするから、俺と結婚してくれ」
「……もし嫌だと言ったら?」
嫌だなんて言うはずがないし、そもそも既に婚姻届は提出済みだ。
プロポーズを断ったら祐飛がどんな反応をするのか、つい好奇心がくすぐられてしまったのだ。