名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(この人……)
雛未は改めて目の前の男性の顔を仰ぎ見た。
白衣の男性は、祐飛と呼ばれていた。
彫りの深い顔立ち、切れ長の目元に、くっきりとした二重。
先ほどの微笑みが嘘のように、雛未を見下ろす表情は固かった。
背は雛未よりも二十センチは高い。ブルーのスクラブの上に白衣を羽織っているだけなのに、スタイルが良いせいか、立ち姿が絵になる。
医師とは思えないほどの整った容姿は、宝の持ち腐れとしか言いようがなかった。
ふと、彼が首から下げているモバイルフォンに目が留まる。
モバイルフォンには『脳神経外科』と物品の管理場所を示すシールが貼られていた。
「先生は脳神経外科のお医者さんでしょうか?」
「ああ」
特段隠すことでもないのか、祐飛はそっけなく答えた。
若狭議員が倒れた原因は脳出血だということは、既に公表されている。
脳神経外科医である彼ならば、若狭議員の容体を知っているのではないだろうかと思いつく。
『國治おじさん』と親し気に名前を呼んでいた以上、若狭議員と個人的にも親しい間柄であることは明らかだった。