名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 押入れを整理をしていたら、若狭國治という人物からの手紙が見つかったこと。
 ニュースでベリが丘病院に搬送されたと知ったこと。
 娘かもしれないという根拠である母宛の手紙ももれなく見せた。
 手紙の消印が若狭議員の出身地でもあるベリが丘の郵便局で押されたものだったことも、雛未の話の信憑性を高めた。
 祐飛は終始神妙な顔で、雛未の話を聞いていた。

「あんた、名前は?」
「雨宮雛未です」
「歳は?」
「二十九歳です」

 祐飛は雛未の頬に手を添え、顔のパーツをひとつひとつ穴があくほど熱心に観察した。
 頭の中で若狭議員のものと照らし合わせているのかもしれない。
 祐飛の視線が目元から鼻筋、唇へとゆっくり流れていく。こめかみの髪が払われ、耳たぶを触られるとゾクリと鳥肌が立った。
 顔を検分するためとはいえ、祐飛のような端正な容貌の男性に至近距離で見つめられるとついドギマギする。
 でも、目を逸らしたら負けな気がして、頑張って耐えた。
 五分ほどかけて隅々まで観察されたところで、ようやく祐飛から解放される。

「どうして、そうまでして若狭議員に会いたいんだ?金に困っているのか?」

 羞恥のあまり、かあっと身体が熱くなる。
 口止め料を請求するつもりだと思われている?

「お金が欲しいわけじゃありません!」

 雛未は心外だとばかりに声を荒らげた。本当に金が欲しいなら、わざわざベリが丘まで来ずともゴシップ誌の記者に情報を提供すれば済む話だ。
< 23 / 190 >

この作品をシェア

pagetop