名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「俺には守秘義務がある。患者に関することは話せないし、話さない」
決まりきったセリフなのか、祐飛は淀みなく淡々と告げた。
雛未はしゅんとうなだれた。
若狭議員と知り合いなら、正直に自分の正体を打ち開ければ、なんとかしてもらえるのではないかと薄ら期待していたのだ。
「ははっ。やっぱり無理ですよね……」
雛未の口から諦めにも似たため息が漏れ出る。
嘘だと頭から決めつけずに、最後まで話を聞いてくれただけでもありがたいと思うべきなのだ。
雛未は自分で自分を慰めた。
「ところで、ベリが丘病院には、一般病棟とは別にVIP専用の特別室があるのを知っているか?」
「いいえ?」
「この病院には優れた医師と医療設備が備わっている。病に侵された著名人は大体、この特別室に入院する」
「若狭議員も特別室に入院しているんですか?」
なんとはなしに話し始めた祐飛だが、雛未からの質問には無言を貫いた。イエスともノーとも答えない。
雛未はすぐさま事情を察した。
――これは祐飛なりの譲歩だ。
守秘義務違反スレスレのラインで雛未に情報を与えようとしてくれている。