名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 翌朝、朝食を済ませた雛未はホテルを出て、ベリが丘の街を散策し始めた。
 祐飛との待ち合わせの時間にはまだ余裕がある。
 道に迷ったら困るとも思ったが、ホテルにいると余計なことばかり考えてしまう。
 ――祐飛の提案を受けるか、断るか。
 昨夜はとうとう結論が出なかった。
 今はどうしても気分転換が必要だった。

 雛未はベリが丘の中でも、最も人で賑わうショッピングモールにやってきた。
 欧州の映画に出てくるレンガ調の街並みを模したモール内をあてもなく巡り、小腹が空いところで昼食をとることにした。
 焼きたてのパンの匂いに誘われるようにして、モールの向かいにあったブーランジェリーで、バケットサンドとコーヒーをテイクアウトする。
 海沿いの公園でベンチに座ると、早速バケットサンドにかぶりついた。
 暖かい日差しの中で青い空を眺めていると、嘘みたいに穏やかな気持ちになれた。
 雛未はボリュームのあるバケットサンドをものの数分でペロリと食べ切った。お腹の中が美味しいもので満たされると、鬱々とした気分も少しはマシになった。

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