名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(どうしよう!)
内心オタオタしているうちに、今夜二人が泊まる客室の前に到着する。
ルームキーで扉を開けると、そこはレストランと同じアール・ヌーヴォー調のツインルームになっていた。
まず、ベッドが二つあることにホッとした。
(そうよね!祐飛さんがその気があるとは限らないし……)
外来にファンが殺到するくらいだ。
これまで祐飛は数々の美女を侍らしてきたことだろう。
雛未のような田舎娘を相手にするはずがなかろう。
無愛想ではあるが、祐飛が悪い人とは思わない。
わざわざ駅まで迎えに来てくれたし、高い指輪も買ってくれた。夕食だってあらかじめ予約しておいてくれていた。
でも、それとこれとは別問題だ。
二人の間に愛はない。
この結婚は互いの利害が一致しただけの単なる契約結婚。
彼を束縛する権利はないし、束縛される権利もない。
「うわ〜!良い眺め!」
開き直るや否や、雛未はすっかり気が楽になった。窓の外の風景に目を向ける余裕すら出てくる。
窓からはライトアップされた櫻坂とツインタワーがよく見えた。
今日からこの街の住人になったという実感が、じわじわ湧いてくる。
呑気に夜景を眺めていると、突然ふわっと温かいものが背後から覆い被さってきて、息を呑んだ。