名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「雛未」

 窓ガラスには雛未を抱き寄せる祐飛の姿が映りこんでいた。
 腰に回された腕の力に、抗えないものを感じて怯んでしまう。
 熱を孕んだ祐飛の声を聞くと、ドクンと胸が高鳴った。
 初めてでもあるまいし、期待と不安でそわそわと落ち着かない。

「あ、の……。酔ってます?」
「一滴も飲んでないのは知ってるだろ?」

 確かに祐飛は食事の最中、食前酒にすら口をつけなかった。
 酒に酔った勢いでないのなら、他に理由があるのかと、雛未はおそるおそる後ろを振り返った。
 真顔の祐飛の顔が近づいてきて、ゆっくり目を瞑っていく。
 初めての口づけは、ゆっくりと、だが確実に雛未の心を溶かしていった。
 最初は小鳥が餌を啄むような軽いものだったのに、次第に勢いが激しくなる。

「あ……」

 キスの勢いそのままに雛未はベッドに組み敷かれてしまった。
 身体を起こそうとしたが、すぐに祐飛がのしかかってきて身動きが取れなくなった。
 二人分の体重を受けたマットレスが弾み、天蓋のレースが風でふわりと揺れた。

「シャワーを……!」
「これ以上、焦らすな」

 雛未の希望はすげなく却下された。
 初めて二人で過ごす夜は蕩けるほど熱く、いつまでも余韻に浸っていたかった。

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