名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「うわあ……広ーい!」
「あははっ!本当にこの病院ってやたらと広いですよねー」
雛未は総合棟の中央にある、太陽の光が降り注ぐ吹き抜けを見上げ、感嘆の声を漏らした。
ベリが丘病院は総合診療案内や事務室のある総合棟、外科、内科のある東棟、皮膚科、眼科などがある西棟の三つに分かれている。
先日足を踏み入れたのは、ほんの一部でしかない。
雛未が職員として真っ先に覚えるべきなのは、院内にある診療科の場所と名前だ。
雛未は茉莉にもらった、院内の案内図を手元に広げた。
各フロアは専門分野ごとに細かくエリア分けがされており、ベリが丘病院で働く医師たちは日本中から各分野のスペシャリストが集められているという。
(覚えられるかな?)
自他共に認める方向音痴の雛未は、迷子にならないか一層不安を覚えた。慣れるまでは案内図をお守り代わりに持ち歩こうと初日にして心に決める。
ひと通り病院の案内が終わると事務所に戻り、今度はOJTに精を出す。
特別室のアテンドは、すべてにおいて別待遇で、業務内容も普通の職員と大きく違う。
病院職員が着ている制服も、総合診療受付は深緑だが、特別室は濃紺と生地も色味も異なる。
医療事務未経験の雛未は、まず専門用語の意味と基本的な医療保険制度から覚えていかなければならない。
その上で、面会予約システムの使い方、アテンド情報の記入方法など、特別室のアテンド業務に必要な知識を頭に入れていかねばならない。