名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

(ううっ!大変……!)

 初日から覚えることが盛り沢山で、早くも雛未の頭はパンクしそうになっていた。

 特別室にわざわざ専用のアテンド職員が雇われる背景には、ベリが丘という街の特殊性がある。

 一般病棟の面会は予約不要なのに対し、特別室の面会が完全予約制になっているのは、面会者同士が不用意に顔を合わせないようにするためだ。
 ベリが丘には古くから大企業の重役や、著名人が多く暮らしている。入院していること自体を知られたくない者も多い。

 特別室には個人を特定されないよう、ネームプレートも貼られない。当然、患者本人が許可なく病室から出ることも禁じられている。

 制限のある入院生活の中で、細かい雑用や要望を承るのがアテンド業務の役割のひとつだ。

「雛未さん、お疲れ様です!お昼行きましょう!」

 昼休憩の時間になると、茉莉は雛未を総合棟の二階にあるカフェテラスへと誘った。
 南国のリゾートをモチーフにしたカフェテラスは、職員はもちろん、外来患者にとっても、憩いの場所になっている。

 雛未は『本日のオススメ』から、メキシカンデリプレートを選び、茉莉と『職員用』と書かれたエリアにある二人掛けのテーブル席に腰掛けた。

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