名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「こんなこと誰にも……!」
 
 よほど思い詰めていたのだろう。
 純華はとうとう、わっと泣き出してしまった。
 最後の方はしゃくり上げていて、ほとんど聞こえなかった。
 謙虚な純華のことだから、自分が悪いと思い込んで、ひとりで解決しようと頑張っていたに違いない。
 雛未は席を立ち純華の元に駆け寄ると、背中をさすってやった。

「大丈夫!純華さんはすっごく素敵だよ!だから自分を責めないで?」

 ありきたりな慰めを口にして、寄り添うことしかできない無力な自分が悔しい。

「不安、なんです……。聖くんは私との結婚を望んでいなかったんじゃないかって。私と結婚したせいで、本当はなりたくもない政治家なんかにして、彼を不幸にしてしまっているのかも……」
「そんなことない!」

 雛未は純華の疑念を即座に否定した。

「純華さんと結婚して不幸になる人がいるはずない!私が保証する!」
 
 雛未が保証したところで何の意味もないが、純華の涙はピタリと止まった。目をパチクリさせたかと思うと、いじらしくも雛未に微笑んでみせた。

「ありがとうございます」
 
 ――それは今にも消えてしまいそうな、儚げな笑顔だった。

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