名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「仕事終わりのビールがそろそろ美味しい季節だよね」
「わかりますー!」
茉莉はうんうんと何度も頷いた。
特別室がある八階には一般の外来患者も面会者もやってこない。
防音性が重視された作りのため、カウンターの声が病室に届くこともない。
人目を気にする必要がないことから、会話に花が咲いていく。
「雛未さん、おつまみは唐揚げ派ですか?フライドポテト派ですか?枝豆って手もありますけど」
茉莉に尋ねられると、雛未はふふんとドヤ顔で笑った。
「クリームチーズにフライドポテトをディップして食べるのが、最強!」
「はわわ……!罪深い……!」
カロリーをものともしない予想の斜め上の回答に、茉莉は恐れ慄いた。
二人は互いに顔を見合わせ、ふふっと笑った。
「あー!もう!不破先生の奥さんが雛未さんみたいな人でよかったー!」
「それってどういう意味?」
「ここだけの話ですよ?不破先生の奥さんがうちの病院で働くって聞いた時、みんなビビってたんですよ!どんな高慢ちきで高飛車な人がくるのかって」
「高飛車って……」
「遊び半分で職場を荒らされたら、こっちだって困りますからね!」
茉莉の言い分はわからないでもない。
次期院長の妻だからと我が物顔で振る舞われては、周りはたまったものではないだろう。