名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

「やあ」

 カウンターに座る雛未に気さくに声を掛けてきたのは、若狭家の入婿であり、純華の夫の聖だった。

「面会される患者様のIDと予約番号をお伺いしております」

 雛未はいつも通りの決まり文句を口にした。
 しかし、若狭夫婦の内情を聞いたこともあり、純華の姿がどこにも見当たらないことが気になってくる。
 
「今日はおひとりなんですね」
「たまにはね。先生のお顔を拝見しないと落ち着かなくて」

 聖は冗談めかして、義父である若狭議員を『先生』と呼んだ。
 聖は若狭議員の下で私設秘書を務めている。若狭議員の選挙区であるベリが丘の有力者や各種団体との折衝は、すべて聖が担っていると純華から聞いている。
 ベリが丘に顔がきく四季杜家次男の聖らしい役割だ。

「この間は純華が世話になったね。とても楽しかったとはしゃいでいたよ」
「あ、いえ。私も誘ってもらえて嬉しかったです」
「義父のことで色々と悩むことも多いしね。いい息抜きになったと思う。本当にありがとう」

 純華を気遣い雛未にお礼を述べる聖は、理想的な情の篤い夫を体現していた。

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