まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
26一度だけ
私の力は触れる事でしか使えないけれど。
それならば、直接大地に触れて願えば広がり続ける穴を止める事が出来るかもしれない。
「地上へ? ダメだ。そんな危険な事はさせない」
決して行かせないとばかりにジェイドは腕に力を込め私を抱きしめた。
彼の言う通り穴が広がり続けている今、地上に降りる事は危険でしかない。
そうと分かっていても、下りなければ私には何も出来ない。
だからもう一度下ろして欲しいと頼むつもりで、彼の目をジッと見つめた。
「ジェイド……おね」
『お願い』と告げようとした唇は、なぜかジェイドの唇に塞がれてしまう。
「んん……っ」
(ど、どうして今? こんな時にキスをするの?)
側にいたアーソイル公爵は目を丸くしてこちらを見ている。
エマとギルは一瞬目を開いたが、何度か頷くと微笑みを浮かべた。
「なるほどね、ローラに願われたら嫌でも従わざるを得ない。だから言わせないようキスをしたのか」
「あら、だったら指で押さえてもよかったんじゃない?」
「エマは分かってないな。ほら、ジェイドは朝から我慢してただろう?」
「ああ、そうだったわね」
二人は淡々と私達の状況を話す。
――そうだったのね。このキスは私に『お願い』という言葉を言わせない為……でも……。
唇を塞ぐだけにしては、だんだんと濃厚になってきた。
彼からのキスは嫌じゃないけれど、今は違う。
足元では大変なことが起こっているのだ。こんなことをしている場合じゃない。
「んんんっ、んーーっ」
キスを止めようと肩を叩くと、ジェイドは少しだけ唇を離した。
唇が触れる距離で「『お願い』って言わない?」と囁く。
『言わない』と唇を動かして答えると、不安の混じる新緑の瞳で私を見つめながら、少しだけ体を離した。
(ああ……私は言葉不足だから、彼を不安にさせてしまったのね)
誰だって危ない場所へ行くと聞けば止めるはず。
私はまずどうして下へ行きたいのか、その理由を話さなければならなかったのだ。
それならば、直接大地に触れて願えば広がり続ける穴を止める事が出来るかもしれない。
「地上へ? ダメだ。そんな危険な事はさせない」
決して行かせないとばかりにジェイドは腕に力を込め私を抱きしめた。
彼の言う通り穴が広がり続けている今、地上に降りる事は危険でしかない。
そうと分かっていても、下りなければ私には何も出来ない。
だからもう一度下ろして欲しいと頼むつもりで、彼の目をジッと見つめた。
「ジェイド……おね」
『お願い』と告げようとした唇は、なぜかジェイドの唇に塞がれてしまう。
「んん……っ」
(ど、どうして今? こんな時にキスをするの?)
側にいたアーソイル公爵は目を丸くしてこちらを見ている。
エマとギルは一瞬目を開いたが、何度か頷くと微笑みを浮かべた。
「なるほどね、ローラに願われたら嫌でも従わざるを得ない。だから言わせないようキスをしたのか」
「あら、だったら指で押さえてもよかったんじゃない?」
「エマは分かってないな。ほら、ジェイドは朝から我慢してただろう?」
「ああ、そうだったわね」
二人は淡々と私達の状況を話す。
――そうだったのね。このキスは私に『お願い』という言葉を言わせない為……でも……。
唇を塞ぐだけにしては、だんだんと濃厚になってきた。
彼からのキスは嫌じゃないけれど、今は違う。
足元では大変なことが起こっているのだ。こんなことをしている場合じゃない。
「んんんっ、んーーっ」
キスを止めようと肩を叩くと、ジェイドは少しだけ唇を離した。
唇が触れる距離で「『お願い』って言わない?」と囁く。
『言わない』と唇を動かして答えると、不安の混じる新緑の瞳で私を見つめながら、少しだけ体を離した。
(ああ……私は言葉不足だから、彼を不安にさせてしまったのね)
誰だって危ない場所へ行くと聞けば止めるはず。
私はまずどうして下へ行きたいのか、その理由を話さなければならなかったのだ。