まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
私が生まれたその日、新しい家族の誕生を心待ちにしていた彼らは医師から妹の誕生と母親の死を同時に告げられた。
急ぎ向かった先にいたのは、変わり果てた母親と、その横で顔を真っ赤にして泣いていた私だったという。
お爺様は、私を見てすぐに瞳の色がアーソイルの深紅の瞳とは違うと気づいた。
そうして、母親の命を奪ったのは淡紅色の瞳の子の所為だと告げたのだ。
愛しい妻を亡くしたばかりの父と母親を失った子供たちはその言葉を鵜吞みにした。
「なぜ母上が亡くなり、君が生きているのかとずっと思っていた。だが、結婚した私は自身の子を持って、ようやく母の死と淡紅色の瞳は何も関係がないと知ったんだ」
兄は私の瞳をジッと見つめる。
「生まれたばかりの私の子の瞳の色は、その目と同じ淡紅色だった」
「え?」
「間違いはない、私はこの目で見た」
そう言って、兄は自身の後ろにいる子供たちに目を向けた。
「精霊の加護を持つ公爵家では、生まれて間もない子に会う事は禍を招くと言われている。本来なら一日を待って会うとされていたが、母上の時のような事が起こるかもしれないと考えた私は子が生まれて直ぐに会った」
疲れているが嬉しそうに微笑んでいる妻の姿に安堵し、その横に寝ている、生まれて間もない子供の顔を覗き込んだ。
──が、子の瞳を見て愕然とした。
子の瞳の色は、母の命を奪った四女と同じ淡紅色。
しかし、同じ色を持つこの子は母親の命を奪ってはいない。だが、加護なしかも知れない。
──といろいろな事を考えていると、赤子が元気な声で泣き始めた。
妻は愛おしそうに子を抱き母乳を与える。すると、母乳を飲みはじめた子の淡紅色の瞳が見る間に深紅へと変わったのだ。
「君は生まれてすぐに母を亡くした。もちろん母乳は与えられる事はなかった。だから瞳の色は変わらなかったのだ……」
「それは、本当ですか? お母様が生きていれば、私の瞳の色は深紅だったと?」
兄は頷き「そうだ」と言った。
──お母様が生きていれば、母乳を与えてもらえたなら私の瞳の色は違っていた?
その事をお爺様やお父様が知っていれば、私はアーソイル公爵の四女として皆に愛してもらえた?
今にも泣きだしそうな顔をした兄は、ゆっくりと目を伏せた。
「これまで本当に済まない事をした。亡くなってしまったお爺様の分も私が謝るよ」
はじめて瞳の色が変わる事を知った公爵は、黒い目を見開きただ驚いている。
しばらくすると、兄は目を開き、深紅の目を優しく細め私へ微笑みかけた。
「何もかも失った事は、我々の過ちを償う為だったと受け入れる」
「……?」
「本当に済まない」
謝罪を告げた兄は次に思いがけないことを口にした。
「今一度、父上の願いを叶えてくれないか?」
「……願いを?」
それはまさか……。
「加護の力を戻すように願えということですか?」
「私達は十分償いを果たした。瞳の色の理由も理解できただろう?」
「それは…………」
私の瞳の色だけが淡紅色であった理由は分かった。
けれど、償い?
公爵の力によって失われた邸や財宝は、私への償いだったというの?
兄である人は声を震わせる。
「現アーソイル公爵が力を失くしたと他の公爵に知られたくはないんだ。それに私の子はまだ幼く、現れている加護の力も弱い。
私と子供達だけではこれまでの様に人々の力になってやることは難しい。人々の為には父上の加護の力は必要だ。どうか、頼む。父上の加護の力が再び戻るよう願って欲しい。
君なら出来るだろう? 兄である私からの願いだ」
急ぎ向かった先にいたのは、変わり果てた母親と、その横で顔を真っ赤にして泣いていた私だったという。
お爺様は、私を見てすぐに瞳の色がアーソイルの深紅の瞳とは違うと気づいた。
そうして、母親の命を奪ったのは淡紅色の瞳の子の所為だと告げたのだ。
愛しい妻を亡くしたばかりの父と母親を失った子供たちはその言葉を鵜吞みにした。
「なぜ母上が亡くなり、君が生きているのかとずっと思っていた。だが、結婚した私は自身の子を持って、ようやく母の死と淡紅色の瞳は何も関係がないと知ったんだ」
兄は私の瞳をジッと見つめる。
「生まれたばかりの私の子の瞳の色は、その目と同じ淡紅色だった」
「え?」
「間違いはない、私はこの目で見た」
そう言って、兄は自身の後ろにいる子供たちに目を向けた。
「精霊の加護を持つ公爵家では、生まれて間もない子に会う事は禍を招くと言われている。本来なら一日を待って会うとされていたが、母上の時のような事が起こるかもしれないと考えた私は子が生まれて直ぐに会った」
疲れているが嬉しそうに微笑んでいる妻の姿に安堵し、その横に寝ている、生まれて間もない子供の顔を覗き込んだ。
──が、子の瞳を見て愕然とした。
子の瞳の色は、母の命を奪った四女と同じ淡紅色。
しかし、同じ色を持つこの子は母親の命を奪ってはいない。だが、加護なしかも知れない。
──といろいろな事を考えていると、赤子が元気な声で泣き始めた。
妻は愛おしそうに子を抱き母乳を与える。すると、母乳を飲みはじめた子の淡紅色の瞳が見る間に深紅へと変わったのだ。
「君は生まれてすぐに母を亡くした。もちろん母乳は与えられる事はなかった。だから瞳の色は変わらなかったのだ……」
「それは、本当ですか? お母様が生きていれば、私の瞳の色は深紅だったと?」
兄は頷き「そうだ」と言った。
──お母様が生きていれば、母乳を与えてもらえたなら私の瞳の色は違っていた?
その事をお爺様やお父様が知っていれば、私はアーソイル公爵の四女として皆に愛してもらえた?
今にも泣きだしそうな顔をした兄は、ゆっくりと目を伏せた。
「これまで本当に済まない事をした。亡くなってしまったお爺様の分も私が謝るよ」
はじめて瞳の色が変わる事を知った公爵は、黒い目を見開きただ驚いている。
しばらくすると、兄は目を開き、深紅の目を優しく細め私へ微笑みかけた。
「何もかも失った事は、我々の過ちを償う為だったと受け入れる」
「……?」
「本当に済まない」
謝罪を告げた兄は次に思いがけないことを口にした。
「今一度、父上の願いを叶えてくれないか?」
「……願いを?」
それはまさか……。
「加護の力を戻すように願えということですか?」
「私達は十分償いを果たした。瞳の色の理由も理解できただろう?」
「それは…………」
私の瞳の色だけが淡紅色であった理由は分かった。
けれど、償い?
公爵の力によって失われた邸や財宝は、私への償いだったというの?
兄である人は声を震わせる。
「現アーソイル公爵が力を失くしたと他の公爵に知られたくはないんだ。それに私の子はまだ幼く、現れている加護の力も弱い。
私と子供達だけではこれまでの様に人々の力になってやることは難しい。人々の為には父上の加護の力は必要だ。どうか、頼む。父上の加護の力が再び戻るよう願って欲しい。
君なら出来るだろう? 兄である私からの願いだ」