まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
「はい!」
 エイダンくんが大きな声で返事をする。

「え?」

 黄金色の瞳はキラキラと輝きながら鮮やかな新緑へと変わりはじめた。

「フェリクスあなたも……」
 メアリお姉様がポツリと言葉を口にする。

(まさか……?)

 私の手を取っていたお兄様の新緑の瞳はあの日のジェイドと同じように輝きを放っていた。

「ごめんなさい! 私、封印を」

(どうしよう、勝手に……)
 無意識に呟いてしまった私の言葉は、二人の封印を解いてしまったようだ。

 ジェイドやギルのように頼まれた訳じゃない。
 加護の力が体に影響がないとはいえないのに。けれど溢した言葉はもうなかった事には出来ない。
 私は申し訳なく思いながらお兄様に顔を向けた。

「ローラさん、私の封印を解いてくれてありがとう」

 勝手な事をした私に、フェリクスお兄様は新緑の双眸を優しく細めお礼を言ってくれた。

「ぼくも! ローラありがとう!」

 新緑色へと瞳の色を変えたエイダンくんは、フェリクスお兄様と同じように目を細め、お礼を言った。

 エイダンくんの様子に顔を綻ばせていたエマは、視線をフェリクスお兄様に移すと片眉を上げた。
「確かフェリクスは要らないと言っていたわよね?」

(え……⁈)

「そう思っていたのですが、手にしてみてわかりました」
「そう?」

 エマは何もかも分かっていると言わんばかりに笑っている。

「はい。何というか……ようやく本来の自分を取り戻したような、体の奥から力が溢れ出る、とても気持ちのいい感覚です」

 フェリクスお兄様は両手を見つめながらそれは嬉しそうに微笑んだ。

「よく分かるよ」
 ジェイドとギルは大きく頷く。

「ぼくもいいきもちするよ!」

 同じように魔力を手にしたエイダンくんは嬉しそうに手をあげたが、すぐに首を傾げた。

「まほーどうやってつかうの?」

 指を開き手のひらを見つめるエイダンくんに、杖を取り出したエマは呪文を唱えシャボン玉を作り出して見せた。フワフワと浮くシャボン玉にエイダンくんは目を輝かせる。

「こうして魔法を使うには、呪文と正しい使い方を覚えなくてはいけないわ。出来るかしら?」
「できる! ぼくがんばる!」
「偉いわエイダン。では、素晴らしい魔法使いになれるよう偉大な魔女の私が直々に教えてあげるわ」

 エマに魔法を教えてもらえると聞いたエイダンくんは溢れんばかりの笑顔で「はい!」と返事をした。
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