まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
30二人の子供を
「ローラ、どうした?」
浴槽の中、ジェイドは私を後ろから抱きしめながら耳元に唇を寄せた。
彼の低く掠れた優しい声が心地いい。
……けれど、私の心中は穏やかではいられなかった。
「本当によかったの……?」
「何? お風呂を借りた事?」
「それもあるけれど、その事よりも……」
一通りの挨拶を終えた私達に、お兄様は苦笑しながらお風呂に入る事を進めてくれた。
私達はアーソイル公爵邸での一件で砂埃にまみれたせいで、服も体も汚れてしまっていたのだ。
お兄様のお言葉に甘え、私達はそれぞれ浴室を借りる事にして、今私はジェイドと一緒に湯船に入っている。明るい場所で裸を見られる事は恥ずかしいけれど、ひと月ほど前に夫婦は毎日一緒にお風呂に入る決まりがあるとジェイドから教えてもらった。『夫婦』に決まりがあるなんて知らなかった……。
『夫婦』に決まりがあるのなら『家族』にも私の知らない決まりがあるのだろう。
『家族』と暮らす事。
それは幼い頃からの私の『願い』。
その願いを叶えてくれたジェイドの家族に……私は勝手な事をしてしまった。
「他に気になる事があるのか?」
言葉を呑み込み考え込んでしまっている私に、ジェイドは囁くような声で尋ねてくれた。
また……こんな風ではいけない。ちゃんと言葉にしないと。
「あのね、お兄様とエイダンくんの封印を勝手に解いてしまった事が気になっているの」
言った後、私は後悔の念に駆られ俯いた。
これは完全な私の過ちだから。
現れた加護の力は日に日に強くなっていて、対象に触れてさえいれば声にしなくとも強く心で願うだけで叶えられてしまう事もあったのに。
分かっていたはずなのに頼まれてもいない勝手な自分の思いを口にして、彼らの魔力の封印を解いてしまった。
「ローラ、そのことは気にしなくていい」
「でも……本当は、このままでいいと言われていたってエマに聞いたの」
あの後、エマから実はフェリクスお兄様は魔力はいらないと話されていたのだと聞いた。
私には『ありがとう』とお礼を言われたけれど、あの状況ではそう言うしかなかっただけで。
(お礼を言われたのはジェイドの妻だから……)
ジェイドも私を気づかって言っているのでは?
俯く私の暗い顔が湯面に映る。
「兄さんは、ローラに封印を解いて欲しいとは頼めないと思って言ったんだよ」
「え?」
――頼めない?
「どうして?」
振り向き見上げると、ジェイドは真剣な表情を浮かべていた。
「君に対してのさまざまな両親の行いに、兄さんは負い目を感じている」
――負い目? お兄様が?
「お兄様は関係ないわ。そもそも知らなかったのでしょう? 知っていたなら、たとえ両親の行いを止められなくともジェイドには教えてくれたはずよ」
フェリクスお兄様はとても誠実な方だった。両親の行いが見過ごせないものならば、なんとしてでも自分で止めようとされただろう。
「そう言ってくれると嬉しいよ」
ジェイドは安心したような声で話すと、スッと私の耳に顔を近づけた。
浴槽の中、ジェイドは私を後ろから抱きしめながら耳元に唇を寄せた。
彼の低く掠れた優しい声が心地いい。
……けれど、私の心中は穏やかではいられなかった。
「本当によかったの……?」
「何? お風呂を借りた事?」
「それもあるけれど、その事よりも……」
一通りの挨拶を終えた私達に、お兄様は苦笑しながらお風呂に入る事を進めてくれた。
私達はアーソイル公爵邸での一件で砂埃にまみれたせいで、服も体も汚れてしまっていたのだ。
お兄様のお言葉に甘え、私達はそれぞれ浴室を借りる事にして、今私はジェイドと一緒に湯船に入っている。明るい場所で裸を見られる事は恥ずかしいけれど、ひと月ほど前に夫婦は毎日一緒にお風呂に入る決まりがあるとジェイドから教えてもらった。『夫婦』に決まりがあるなんて知らなかった……。
『夫婦』に決まりがあるのなら『家族』にも私の知らない決まりがあるのだろう。
『家族』と暮らす事。
それは幼い頃からの私の『願い』。
その願いを叶えてくれたジェイドの家族に……私は勝手な事をしてしまった。
「他に気になる事があるのか?」
言葉を呑み込み考え込んでしまっている私に、ジェイドは囁くような声で尋ねてくれた。
また……こんな風ではいけない。ちゃんと言葉にしないと。
「あのね、お兄様とエイダンくんの封印を勝手に解いてしまった事が気になっているの」
言った後、私は後悔の念に駆られ俯いた。
これは完全な私の過ちだから。
現れた加護の力は日に日に強くなっていて、対象に触れてさえいれば声にしなくとも強く心で願うだけで叶えられてしまう事もあったのに。
分かっていたはずなのに頼まれてもいない勝手な自分の思いを口にして、彼らの魔力の封印を解いてしまった。
「ローラ、そのことは気にしなくていい」
「でも……本当は、このままでいいと言われていたってエマに聞いたの」
あの後、エマから実はフェリクスお兄様は魔力はいらないと話されていたのだと聞いた。
私には『ありがとう』とお礼を言われたけれど、あの状況ではそう言うしかなかっただけで。
(お礼を言われたのはジェイドの妻だから……)
ジェイドも私を気づかって言っているのでは?
俯く私の暗い顔が湯面に映る。
「兄さんは、ローラに封印を解いて欲しいとは頼めないと思って言ったんだよ」
「え?」
――頼めない?
「どうして?」
振り向き見上げると、ジェイドは真剣な表情を浮かべていた。
「君に対してのさまざまな両親の行いに、兄さんは負い目を感じている」
――負い目? お兄様が?
「お兄様は関係ないわ。そもそも知らなかったのでしょう? 知っていたなら、たとえ両親の行いを止められなくともジェイドには教えてくれたはずよ」
フェリクスお兄様はとても誠実な方だった。両親の行いが見過ごせないものならば、なんとしてでも自分で止めようとされただろう。
「そう言ってくれると嬉しいよ」
ジェイドは安心したような声で話すと、スッと私の耳に顔を近づけた。