まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
「チーチ、お肉ばっかりたべるのダメ! ハーハはケーキたべたいの?」

 青いリボンを首に巻かれたチーチは空のお皿をペロペロと舐めている。お義父様は驚くほど抵抗なく犬に変わった事を受け入れられているようだ。

 その様子を見ていたギルは、驚いたように息を漏らした。

「僕、あんな風にすぐにお皿を舐めるなんて出来なかったな」
「始めの頃は、何度もフォークを叩いていたわね」

 コクコクとワインを飲み干したエマは懐かしそうに話した。
「だって直接口で食べるなんて動物みたいだろう? そんな簡単に受け入れられないよ」

◇◇◇

 エイダンくんはケーキを刺したフォークを持つと、赤いリボンを首に巻いているハーハの口元に近づけた。
 少しずつ舐めるように上品に食べるハーハの尻尾は嬉しそうにパタパタと揺れている。

 ――よかった。

 結果として、私の願いは上手くいった。
 二匹に触れながら、さっきの言葉を取り消して欲しいと強く願うと二匹の体は光を放った。
 すかさず「僕を大好きになるようにお願いして」とエイダンくんに願われ、私はその言葉をそのまま口にした。

 二匹は再び体を光らせて「キャン、キャン」と二度吠え尻尾をパタパタと振りながらエイダンくんの下へ走り甘えはじめた。

「エイダン、どうしてそんな願いを? 願わなくとも両親は今のエイダンを好きだろう?」
 エイダンくんの足に体を擦り付ける二匹を見ながら、ジェイドは眉根を寄せる。

「あら、ジェイドは分かっていないのね」

 二匹とじゃれ合うエイダンくんを見ながら、エマはクスクスと笑う。

「エイダンはそれが嫌だったのよ」
「それが嫌?」
「そうよ」

 犬の姿となった二人は、ジェイドの考えるように新緑色の瞳へと変わったエイダンくんになら媚びる様に甘え尻尾を振るだろう。

「エイダンは賢い子。だからこそ瞳の色一つで態度を変える二人を好きになれないと思い理由をつけたの。自分が彼らを嫌わないために」

 エマの話を聞いていたのだろう、二匹の頭を撫でていたエイダンくんがコクリと頷いた。

「そうか……」

 ジェイドは声を落とす。

「エイダンは僕と似て感受性の強い賢い子だから」

 嬉しそうな声で話しながらギルはお手製のケーキを切り分けた。
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