まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜

32あなたを愛してる

 しばらくすると、遊んでいたエイダンくんは壁にもたれかかり眠ってしまった。
 一緒にいた二匹(両親)も彼をはさむ様にしてスヤスヤと眠っている。

「いろいろあったもの、疲れたのね」

 エマは残り少なくなったワイングラスを片手にし、フェリクスお兄様の腕に抱かれたエイダンくんに目を細める。

「そろそろ私達は帰るわ。フェリクス、遅くまでお邪魔したわね」

 飲み干したグラスをテーブルに置いたエマはサッと杖を振りテーブルの上の物をすべて片付けた。
 寝ている二匹に向け呪文を唱えながらもう一振りすると、床に柔らかそうなクッションが敷かれた。

「さぁ、ジェイド待たせたわね。あなた達もお帰りなさい」
「そうだね。ジェイドはまだ足りないだろうし、それに頑張らないといけないから。僕が直接部屋に送り届けてあげるよ」

 ニッといたずらな笑みを浮かべたギルは、杖の先を私達に向ける。

 ――足りない? 頑張る?

 ギルは何を言っているのだろう?
 私はもうお腹はいっぱいで、これ以上食べられない。
 ジェイドもそう見えるけれど?
 それに頑張るって何を? 直接部屋に送るって?

「はい、そうします」と分かった様子のジェイドは席を立ち、座っていた私を抱きかかえた。

「じゃあ送るよ」

 ギルが杖を掲げると「少し待って下さい」とフェリクスお兄様が声を掛けた。

「どうかもう一度、私達にお礼を言わせてください」

 エイダンくんを腕に抱いたままフェリクスお兄様とメアリお姉様は私達の前に並び姿勢を正された。

「ジェイド、ローラさん、今日は本当にありがとう。愚かな事をした両親にも希望を与えてくれ、私達を気遣ってくれた事、封印を解いてくれた事も感謝しています。それから……ずっと言いたかった言葉が……」

 フェリクスお兄様は潤みを帯びた新緑色の目で私を見つめる。

「ローラさん」

「はい」

「弟と結婚してくれてありがとう。幸せにしてくれて家族になってくれてありがとう。どうか、これからもジェイドをよろしく頼みます」

 お兄様が話し終えると、ギルは杖を振り下ろした。
< 119 / 121 >

この作品をシェア

pagetop