まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
『始まりの魔女』エマは体にある膨大な魔力の所為か、ある時から老化が止まった。
それからしばらくして、同じように長い時を生きる魔法使いと一緒になり、二人の息子の母親となった。
魔女と魔法使いの間に生まれた息子たちは、もちろん魔力を持っていた。
エマは息子たちに、魔力を持ち魔法を使える事に自惚れずその力は弱い者を助け守るために使うように教え育てた。
大人になった息子達の一人は、ライン辺境伯の娘と結婚し、もう一人は爵位を受けレイズ侯爵となり貴族の女性と結婚をした。
エマ達と同じように人よりも長い時を生きるはずだった息子たちは、愛する者と同じ時を生き年老いていくことを選び、自身の膨大な魔力を子孫へ受け渡した。
以降、レイズ侯爵とライン辺境伯の者達は魔力持ちとなったのだ。
しかし、彼らは長い時を生きる事はなかった。
それだけでなく、魔力を持ち魔法を使う事が出来たのは男性のみ。なぜか女性は魔力を持つことはなく、新緑色の瞳だけを受け継いだ。
息子達は魔力と共に、エマの教えである『魔法は弱い人を助け守る為に使う』という事を、魔力持ちの約束として伝えていた。
――長い時が過ぎ。
ライン辺境伯は男児が生まれず魔力を途絶えさせ、瞳の色だけを受け継いだ。
レイズ侯爵には絶えず男児が生まれ、彼らはこの国で唯一の魔法使いと呼ばれるようになる。
あれはついこの間。(エマにとっては)
レイズ侯爵はアクアスト公爵とフレイ公爵と共に、ある国に攻め入った。
相手の国にも精霊の加護を持つ者はいたが魔法使いはいなかった為、あっという間に敵国は落とされた。火と水と魔法により攻め入られた国では多くの命が犠牲になった。
エマはこれまで守られてきた約束を破り、魔力を使い人を殺める争いに加担したレイズ侯爵を許せなかった。
一度行われた事はまた繰り返されるだろう、そう考えたエマは、レイズ侯爵の魔力を封印することに決めた。
もちろんその後に生まれてくる子孫たちも使えなくなるようにした。自身が使えなくとも子が使えれば、操り使おうとすることが目に見えていたからだ。
魔力を封印されたレイズ侯爵は、封印を解かせようと躍起になりエマを探したという。