まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
ゴゴッ……ゴゴゴッ……
不気味な音はだんだんと大きさを増していく。心なしか足下が揺れている。
これは?
ジェイドは彼を抑えている使用人と共に山頂に目を向けていた。
「ワンワンワンワンッ‼︎」
何かを感じたのか、ギルがこれまでになく吠えだした。
ギルの声が家の中に届いたのだろう、エマが慌てた様子で外に出てきた。
「どうしたの、ギル? そんなに吠えて」
エマは家の前にいる人物を見て目を丸くする。
「あなた達、どうやってここに?」
背の高いエマはクリスタ様を見下ろしながら、棘のある言い方をした。
クリスタ様は視線を鋭くしてエマを見上げる。
「失礼な女ね。私を誰だと思っているのよ」
「……知らないわ。あなたこそ人の家に勝手に押しかけておきながらその態度は何? 今時の娘は礼儀も知らないの?」
そう言われたクリスタ様は、カッと顔を赤らめた。
「私は水の加護を持つアクアトス公爵の三女クリスタよ!」
胸を張り睨みつけるクリスタ様の事を、フッと笑い飛ばしたエマはゆっくりと言葉を返した。
「そう、アクアトスなのね。私は魔女よ。それで何をしにここへ来たのかしら?」
ゴゴゴッ!
その時、不気味な音がひと際大きくなった。
ハッと音のする方に顔を向けたエマは、どこからか杖を現した。
周りを見渡し、畑の側に立っている私を見つけると「ローラ、こっちへ来て、早く!」と叫ぶ。
だが、エマの声とほぼ同時に私の足下の地面に亀裂が入った。それによって起きた振動に体はよろめいて動けない。
「ローラッ!」
亀裂からじわじわと水が滲み出てきていた。
嫌な感じがする。
急いで亀裂の向こうへ行かなくてはと足を踏み出そうとしたけれど、グラグラと揺れる地面に私は立っている事がやっとだ。
とても歩くことは出来ない。
私はエマに無理だと首を横に振った。
「私が助けるわ!」
エマは杖を私へと向け振ろうとする。
その瞬間、山頂からの音が大きく変わった。
「ギル! ローラを守って!」
エマは杖を山頂へと振りかざす。
「ワンッ!」
ギルが大きな声で鳴いたと同時に、杖から光が放たれ、ここへなだれ込んできていた土砂の流れを止めた。
「アクアトス、今すぐに止めなさい! 加護の力は私利私欲のために使うものではないわ!」
(これはクリスタ様の加護の力なの?)
加護の力を使ったという事は、土砂崩れは山に浸透する水の力を使い引き起こされているのだろう。
「私は加護を持つことを許された尊い人なの。その私が力をどう使おうと勝手でしょう?」
エマの焦り顔をみたクリスタ様は満足げに笑う。
よく見ると、クリスタ様とジェイドの周りには水で膜のようなものが張られていた。あれで彼らは守られるということのようだ。
彼女は、私一人を殺めるために山を崩したというの?
関係のないギルとエマまで巻き沿いにしようとしているの?
――そんな、そんな事。
私を守るように言われたギルは、こちらへ一目散に駆けて来る。
「無駄よ」
クリスタ様の冷酷な声が合図だったかのように、足下のひび割れから水が真上に噴き出て、地表が大きく割れた。
私の体は、キレイにしたばかりの畑と一緒にぐらりと傾く。
後ろは峡谷。
このまま落ちれば命はない。
「ジェイド!」
最後に愛する人の名を呼んで、私はなすすべもなく土砂とともに谷底へと落ちていった。
不気味な音はだんだんと大きさを増していく。心なしか足下が揺れている。
これは?
ジェイドは彼を抑えている使用人と共に山頂に目を向けていた。
「ワンワンワンワンッ‼︎」
何かを感じたのか、ギルがこれまでになく吠えだした。
ギルの声が家の中に届いたのだろう、エマが慌てた様子で外に出てきた。
「どうしたの、ギル? そんなに吠えて」
エマは家の前にいる人物を見て目を丸くする。
「あなた達、どうやってここに?」
背の高いエマはクリスタ様を見下ろしながら、棘のある言い方をした。
クリスタ様は視線を鋭くしてエマを見上げる。
「失礼な女ね。私を誰だと思っているのよ」
「……知らないわ。あなたこそ人の家に勝手に押しかけておきながらその態度は何? 今時の娘は礼儀も知らないの?」
そう言われたクリスタ様は、カッと顔を赤らめた。
「私は水の加護を持つアクアトス公爵の三女クリスタよ!」
胸を張り睨みつけるクリスタ様の事を、フッと笑い飛ばしたエマはゆっくりと言葉を返した。
「そう、アクアトスなのね。私は魔女よ。それで何をしにここへ来たのかしら?」
ゴゴゴッ!
その時、不気味な音がひと際大きくなった。
ハッと音のする方に顔を向けたエマは、どこからか杖を現した。
周りを見渡し、畑の側に立っている私を見つけると「ローラ、こっちへ来て、早く!」と叫ぶ。
だが、エマの声とほぼ同時に私の足下の地面に亀裂が入った。それによって起きた振動に体はよろめいて動けない。
「ローラッ!」
亀裂からじわじわと水が滲み出てきていた。
嫌な感じがする。
急いで亀裂の向こうへ行かなくてはと足を踏み出そうとしたけれど、グラグラと揺れる地面に私は立っている事がやっとだ。
とても歩くことは出来ない。
私はエマに無理だと首を横に振った。
「私が助けるわ!」
エマは杖を私へと向け振ろうとする。
その瞬間、山頂からの音が大きく変わった。
「ギル! ローラを守って!」
エマは杖を山頂へと振りかざす。
「ワンッ!」
ギルが大きな声で鳴いたと同時に、杖から光が放たれ、ここへなだれ込んできていた土砂の流れを止めた。
「アクアトス、今すぐに止めなさい! 加護の力は私利私欲のために使うものではないわ!」
(これはクリスタ様の加護の力なの?)
加護の力を使ったという事は、土砂崩れは山に浸透する水の力を使い引き起こされているのだろう。
「私は加護を持つことを許された尊い人なの。その私が力をどう使おうと勝手でしょう?」
エマの焦り顔をみたクリスタ様は満足げに笑う。
よく見ると、クリスタ様とジェイドの周りには水で膜のようなものが張られていた。あれで彼らは守られるということのようだ。
彼女は、私一人を殺めるために山を崩したというの?
関係のないギルとエマまで巻き沿いにしようとしているの?
――そんな、そんな事。
私を守るように言われたギルは、こちらへ一目散に駆けて来る。
「無駄よ」
クリスタ様の冷酷な声が合図だったかのように、足下のひび割れから水が真上に噴き出て、地表が大きく割れた。
私の体は、キレイにしたばかりの畑と一緒にぐらりと傾く。
後ろは峡谷。
このまま落ちれば命はない。
「ジェイド!」
最後に愛する人の名を呼んで、私はなすすべもなく土砂とともに谷底へと落ちていった。