まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
燭台に一本だけ灯されたロウソクが、礼拝堂の一角を照らしている。
意識のないジェイドと、泥だらけの私の体を冷やさないようにとつけられた暖炉の火がパチパチと音を立てている。
私は、彼の横に膝をついた。
「泥だらけね」
そう小さな声で言いながら、割れてしまった紅水晶の耳飾りに触れた。
――こうして彼の寝顔を見るのはあの夜以来。
「ジェイド」
彼は、私の名前を叫び魔法を使ったのだとエマは言い、私を守るように抱きしめたとギルは話した。
どうして?
「私、分からないの。あなたがここへ来た理由も、守ってくれた訳も」
あなたは私と別れ、クリスタ様と一緒になりたいのだと、彼女との子供を望んでいると知った。
あなたは優しいから、私に別れを告げられずにいるのだと聞いた。
胸に置いた彼の両手をよく見れば、左手の薬指には結婚指輪がはめられたままになっている。
「どうして? ジェイド、あなたはクリスタ様を愛しているのでしょう?」
離縁を決め出て行った私との結婚指輪を、なぜ彼はまだはめているの?
私が家を出たあの日、水晶玉に映った二人は抱き合っていた。
「あの人を愛しているのでしょう?」
あの日見た光景を思い出してしまった私は、彼を見ている事が出来ず下を向いた。
その時、結んでいた髪が解け、つけていた小さな髪飾りがコトリと音を立て床に落ちた。
彼からもらった大切な髪飾り。
失くさずにすんでよかったと安堵しながら、拾おうと差し伸べた私の手を、大きな手が包み込んだ。
「ローラ」
優しい声に顔を上げれば、目を覚ましたジェイドが私を見つめている。
「ジェイド……」
彼は握った私の手を引き寄せ、そのまま抱きすくめた。
「ローラ、よかった」
――ジェイド。
いままで気を失っていたのに、目覚めてすぐに私を心配してくれるなんて。
――それなのに、私は。
彼に抱きすくめられ嬉しいのに、体はなぜか強張ってしまう。
「ローラ?」
そこへ、体を洗い真っ白になったギルがやってきた。
彼の腕の中にいる私の様子を見て、下ろしている尻尾の先を揺らす。
「ジェイド、ローラを離してくれないかな?」
ギルは声を低くした。
「は……犬? 言葉を?」
声の主を見たジェイドは驚いて体をピクリと震わせる。
「僕はギル、魔女と暮らしている犬だよ。僕は話が出来るんだ。あのね、悪いけどローラを離してくれない?」
「あ、え……」
ジェイドはどうしてそう言われるのかが分からずに戸惑っているようだった。
ギルは首を傾げながらさっきより柔らかい話し方をする。
「二人とも泥で汚れているだろう? とりあえず彼女からお風呂に入ってもらう。君は後でいいよね?」
「ああ、もちろん」
その言葉に納得したジェイドは、抱きしめていた腕を離した。
尻尾をフワフワと揺らしながら、ギルは私に優しい眼差しを向ける。
「ローラ、エマが、話したい事があるとお風呂場で待ってる。行ってくれる?」
「はい」
私は返事をして、礼拝堂を後にした。
意識のないジェイドと、泥だらけの私の体を冷やさないようにとつけられた暖炉の火がパチパチと音を立てている。
私は、彼の横に膝をついた。
「泥だらけね」
そう小さな声で言いながら、割れてしまった紅水晶の耳飾りに触れた。
――こうして彼の寝顔を見るのはあの夜以来。
「ジェイド」
彼は、私の名前を叫び魔法を使ったのだとエマは言い、私を守るように抱きしめたとギルは話した。
どうして?
「私、分からないの。あなたがここへ来た理由も、守ってくれた訳も」
あなたは私と別れ、クリスタ様と一緒になりたいのだと、彼女との子供を望んでいると知った。
あなたは優しいから、私に別れを告げられずにいるのだと聞いた。
胸に置いた彼の両手をよく見れば、左手の薬指には結婚指輪がはめられたままになっている。
「どうして? ジェイド、あなたはクリスタ様を愛しているのでしょう?」
離縁を決め出て行った私との結婚指輪を、なぜ彼はまだはめているの?
私が家を出たあの日、水晶玉に映った二人は抱き合っていた。
「あの人を愛しているのでしょう?」
あの日見た光景を思い出してしまった私は、彼を見ている事が出来ず下を向いた。
その時、結んでいた髪が解け、つけていた小さな髪飾りがコトリと音を立て床に落ちた。
彼からもらった大切な髪飾り。
失くさずにすんでよかったと安堵しながら、拾おうと差し伸べた私の手を、大きな手が包み込んだ。
「ローラ」
優しい声に顔を上げれば、目を覚ましたジェイドが私を見つめている。
「ジェイド……」
彼は握った私の手を引き寄せ、そのまま抱きすくめた。
「ローラ、よかった」
――ジェイド。
いままで気を失っていたのに、目覚めてすぐに私を心配してくれるなんて。
――それなのに、私は。
彼に抱きすくめられ嬉しいのに、体はなぜか強張ってしまう。
「ローラ?」
そこへ、体を洗い真っ白になったギルがやってきた。
彼の腕の中にいる私の様子を見て、下ろしている尻尾の先を揺らす。
「ジェイド、ローラを離してくれないかな?」
ギルは声を低くした。
「は……犬? 言葉を?」
声の主を見たジェイドは驚いて体をピクリと震わせる。
「僕はギル、魔女と暮らしている犬だよ。僕は話が出来るんだ。あのね、悪いけどローラを離してくれない?」
「あ、え……」
ジェイドはどうしてそう言われるのかが分からずに戸惑っているようだった。
ギルは首を傾げながらさっきより柔らかい話し方をする。
「二人とも泥で汚れているだろう? とりあえず彼女からお風呂に入ってもらう。君は後でいいよね?」
「ああ、もちろん」
その言葉に納得したジェイドは、抱きしめていた腕を離した。
尻尾をフワフワと揺らしながら、ギルは私に優しい眼差しを向ける。
「ローラ、エマが、話したい事があるとお風呂場で待ってる。行ってくれる?」
「はい」
私は返事をして、礼拝堂を後にした。