まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
 目の前に座るジェイドは優しい眼差しを私へ向けている。
 聞かなければ、と口を開いた。

「ジェイド」
「俺の両親から何か言われたんだろう?」

 まだ何も話さないうちにジェイドが話し出した。
 その優しい声に、思わず何も言わずに頷きそうになる。
 ――ダメ、それでは黙って家を出てきた私のままだ。
 きちんと自分の気持ちを、思いを伝えて、それから彼の話を聞かなければ。

「あの……」
「すまない、俺がもっと強く出ていればこんな事にはならなかったのに」

 ジェイドはせつなげな表情を浮かべている。
 違う、あなたのせいじゃない。私が話せばよかったの。

「ちが……」
「強引に修道院に送って、その上君をあんな馬車に乗せるなんて。それに家の物も勝手に処分して、君の物まで取り上げて」
「それは」

 急に出て行けと言われここに来ることになったけれどジェイドと別れたこと以外は、私にとって幸運だった。
 ここに来たからエマとギルに出会う事が出来たのだから。

「でも、ローラどうして彼らの言う通りにした?」
「だって……」
「ああ、そうだマックスも言っていた。両親から脅されたんだろう?」

 私は首を横に振った。
 そうじゃない、確かに離縁なさいと強く言われたけれど、私が離縁を決めた理由は……。

「ク……」

 話そうとしたが、先にジェイドが話し始めた。

「脅されていない? じゃあどうして?」
「それは」

 話そうとするけれど、いつもよりも雄弁なジェイドに先に言われてしまう。

「どうして出ていく前日に俺を求めた?」
「求めたって……」

 どうして急にその話になるのだろう。
 さっきから、私はちっとも話せていない。
 それに、正面に座っているジェイドはずっと私から目を離さない。
 その視線のせいか、言われた事が恥ずかしかったせいか体は熱くなった。

 出ていく前に彼を誘ったのは――別れの夜だったから。
 誰にも愛されなかった私を愛してくれたただ一人の人。
 最後に彼のすべてを覚えておきたかった。

 だから私から誘った。
 もう会う事も出来ないと思っていたから、はじめて自分の気持ちのままに行動した。

「子供を身ごもっているかもしれないとは思わなかったのか?」
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