まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
 テーブルの上にある水晶玉は、ただ透明な輝きを放っている。

 でも……分からない。

 彼の話が事実なら、あの日水晶玉に映った二人は何だったのだろう。従兄妹同士は普段から抱き合うのだろうか? 挨拶として抱き合うから香りが移るの?
 けれど彼はクリスタ様とは見かけても話をすることもないと言った。
 だったらどうして?

 聞いてみようかとジェイドに目を向けたけれど、彼は依然として項垂れたまま。

 ――とても今の彼に聞くことは出来ない。

 同じように黙ってジェイドを見ていたエマは椅子を立った。

「今夜はここまでにしましょう。ジェイドもいろいろと考える事があるでしょう。私も今日はいつもより人と接したから、少し疲れたわ」

 エマはそう言うとギルと一緒に部屋を出て行こうと扉へ向かった。扉に手をかけて「あ!」と思い出したように振り向いた。

「アクアトスを送り返した山道に、馬が一頭いたの。鞍にジェイドの名前が刻まれていたからこっちへ連れて来たのよ。ローラ、庭にいるから様子を見てくれる? 外は寒いからこのショールを羽織って」

 呪文を唱え、私の膝に白いショールを一枚出すと、お願いねと言いエマとギルは居間を後にした。
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