まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
この日、彼は私に会う事を父親であるアーソイル公爵に求めてくれた。
公爵は「会いたければ好きにすればいい。アレに会う事に許可はいらない」と返事をした。
その言葉で私の境遇がよく分かったと、後日私の下へ来た彼は悲しそうな笑みを浮かべた。
それから、彼は本当に私に会いに来てくれるようになった。
家族の誰も私に近づくことも、話をすることもないのに彼は私の許へ通ってくれる。
ジェイドは私に四つ年上、十八歳で学園を卒業した後は騎士となり、王弟であるサムス公爵閣下の下で働いていると教えてくれた。
彼はとても優しい人だった。
私が屋敷と別荘しか知らない、学校にも行った事がない。今の持っている知識は使用人たちがこっそり持って来てくれた本と自然に学んだことだけだと話すと、自分が教えてあげると言って、勉強や貴族のマナーを教えてくれた。
時にはアーソイル公爵に頼み、外へ連れ出してくれることもあった。
彼の愛馬ステラに一緒に乗って走ったことは今も鮮明に覚えている。
あの日は、通りかかった教会でバザーが行われていた。
寄ってみようと彼に言われ、行ってみると、シスターや教会を利用する子供たちが作ったアクセサリーが売られていた。
それは小さな髪飾り。デザインは皆同じだったが、それぞれ色の違うガラス玉がついている。
「かわいい……」
私はアクセサリーを持った事がない。髪飾りは乳母につけてもらった生花ぐらい。
つい夢中になって、お日様の光をキラキラと反射させるガラス玉を見ていた。
「ローラ、気に入ったものがあればプレゼントするよ」
「でも……」
「ここで買うと寄付になるんだ。教会に来る人々を助ける事になる」
そんなに高いものじゃないから気にしないでいい、と彼は笑った。
そう言われたが私には決められなかった。こうして何かを買ってもらう事なんてなかったから。
戸惑っている私にジェイドは「これはどう?」と彼の瞳の色と似た緑色のガラス玉のついた物を選んでくれた。
「つけていい?」
「はい」
彼はその場で、私の髪に髪飾りをつける。
「か…………」
ジェイドが口を開いたと同時に、周りにいたシスターと子供たちが声を弾ませた。
「まぁ! とてもよくお似合いですよ!」
「お姉ちゃん可愛い!」
彼は慌てた様子で子供たちを止める。
「先に言わないでくれ」
先に言われちゃったな、と苦笑いを浮かべた彼は私の耳元に唇を寄せ「可愛いよ」と囁いた。
彼と会える日は、あっという間に時が過ぎていく。
私は、いつしか彼が来ることを心待ちにするようになっていた。
彼を想うと胸が高鳴り、会えると嬉しくて自然と笑みを浮かべてしまう。
これが恋だと、好きだと知るとその気持ちは加速した。
「俺と結婚して欲しい」
親しんだ者の前だけは自分の事を俺というジェイドから結婚を申し入れてもらったのは出会ってから一年後の事だった。
「はい」
ジェイドは私の返事を聞いて、すぐにアーソイル公爵に婚姻の申し入れをした。
アーソイル公爵は、要らない存在でしかなかった私のこの縁談をすぐに受け入れた。
彼の両親も私に力がない事を知ったうえで、結婚を許してくれた。
――私とジェイドは結婚をした。
結婚式は二人だけで行った。
侯爵令息である彼の結婚式としてはあり得ない事だが、私の境遇を思い配慮してくれたのだ。
彼の私への気遣いが嬉しかった。幸せだった。
これまでの嫌な事も寂しかった事もすべて忘れてしまえるほどに……。
公爵は「会いたければ好きにすればいい。アレに会う事に許可はいらない」と返事をした。
その言葉で私の境遇がよく分かったと、後日私の下へ来た彼は悲しそうな笑みを浮かべた。
それから、彼は本当に私に会いに来てくれるようになった。
家族の誰も私に近づくことも、話をすることもないのに彼は私の許へ通ってくれる。
ジェイドは私に四つ年上、十八歳で学園を卒業した後は騎士となり、王弟であるサムス公爵閣下の下で働いていると教えてくれた。
彼はとても優しい人だった。
私が屋敷と別荘しか知らない、学校にも行った事がない。今の持っている知識は使用人たちがこっそり持って来てくれた本と自然に学んだことだけだと話すと、自分が教えてあげると言って、勉強や貴族のマナーを教えてくれた。
時にはアーソイル公爵に頼み、外へ連れ出してくれることもあった。
彼の愛馬ステラに一緒に乗って走ったことは今も鮮明に覚えている。
あの日は、通りかかった教会でバザーが行われていた。
寄ってみようと彼に言われ、行ってみると、シスターや教会を利用する子供たちが作ったアクセサリーが売られていた。
それは小さな髪飾り。デザインは皆同じだったが、それぞれ色の違うガラス玉がついている。
「かわいい……」
私はアクセサリーを持った事がない。髪飾りは乳母につけてもらった生花ぐらい。
つい夢中になって、お日様の光をキラキラと反射させるガラス玉を見ていた。
「ローラ、気に入ったものがあればプレゼントするよ」
「でも……」
「ここで買うと寄付になるんだ。教会に来る人々を助ける事になる」
そんなに高いものじゃないから気にしないでいい、と彼は笑った。
そう言われたが私には決められなかった。こうして何かを買ってもらう事なんてなかったから。
戸惑っている私にジェイドは「これはどう?」と彼の瞳の色と似た緑色のガラス玉のついた物を選んでくれた。
「つけていい?」
「はい」
彼はその場で、私の髪に髪飾りをつける。
「か…………」
ジェイドが口を開いたと同時に、周りにいたシスターと子供たちが声を弾ませた。
「まぁ! とてもよくお似合いですよ!」
「お姉ちゃん可愛い!」
彼は慌てた様子で子供たちを止める。
「先に言わないでくれ」
先に言われちゃったな、と苦笑いを浮かべた彼は私の耳元に唇を寄せ「可愛いよ」と囁いた。
彼と会える日は、あっという間に時が過ぎていく。
私は、いつしか彼が来ることを心待ちにするようになっていた。
彼を想うと胸が高鳴り、会えると嬉しくて自然と笑みを浮かべてしまう。
これが恋だと、好きだと知るとその気持ちは加速した。
「俺と結婚して欲しい」
親しんだ者の前だけは自分の事を俺というジェイドから結婚を申し入れてもらったのは出会ってから一年後の事だった。
「はい」
ジェイドは私の返事を聞いて、すぐにアーソイル公爵に婚姻の申し入れをした。
アーソイル公爵は、要らない存在でしかなかった私のこの縁談をすぐに受け入れた。
彼の両親も私に力がない事を知ったうえで、結婚を許してくれた。
――私とジェイドは結婚をした。
結婚式は二人だけで行った。
侯爵令息である彼の結婚式としてはあり得ない事だが、私の境遇を思い配慮してくれたのだ。
彼の私への気遣いが嬉しかった。幸せだった。
これまでの嫌な事も寂しかった事もすべて忘れてしまえるほどに……。