まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
「じゃあ、今度は俺が君に聞く」

「はい」

「どうして黙って出て行った?」

 ジェイドの声が少しだけ鋭くなる。
 こんな風に話をされるとすぐに臆してしまう私だけれど、今の彼から発せられる声は不思議と怖くなかった。

「別れを告げれば、あなたは嘘でも引き留めるから、可哀想だと思っているからって聞いたの。だから」

 ジェイドに可哀想だと思われていると知り、悲しかった。
 けれど、これもレイズ夫妻の嘘だったと今なら分かる。

「……なるほどね」

 ジェイドは、両親に対して心底嫌気が差したと言い、目を伏せた。

 ゆっくりと目を開くと、今度は囁くような優しい声になる。

「ここへは? たどり着くまでに何もなかった?」

 心配だった、それもあんな古い馬車で、と彼は私の頬を撫でた。

「何も」

 馬車は確かに古かったけれど、御者は優しい人だったと告げるとジェイドは良かったと笑みを浮かべた。
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