まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
「ジェイド?」
これって……?
薄暗い部屋の中、見上げた彼のその新緑の瞳は先ほどと同じきらめきを放ったまま。
「今、俺の中の魔力は全て解放された」
彼は着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
「え?」
「ローラ、君が心を開くことで力は蘇るみたいだ」
「心を開く?」
それって、さっきダメって伝えた事?
「それと、俺の愛かな」
ジェイドはこれまで見た事もない妖艶な笑みを浮かべる。
「愛?」
キレイに結われた髪に彼はスッと指を入れ、ためらいもせず梳き始めた。
「ジェイド?」
髪についていた小さな髪飾りを手に取ると、嬉しそうな顔になる。
「まだ持っていてくれたんだ」
「覚えているの?」
「もちろん、すべて覚えてる」
髪飾りをテーブルに置くと「そうだ」と言いながらかろうじて着ていたドレスを脱がせ床に落とした。
「ドレス、すごく似合ってた」
下着姿の私を見下ろしながらジェイドは言った。
――その言葉は、ドレスを着ている時に聞きたかった。
「でも、今は要らない」
ジェイドはそう言いながら下着の上で指を滑らせた。
もどかしいほどにゆっくりと胸のふくらみを象るように撫でる彼の指先が頂点に触れる。くいっと押し込まれ、たまらず声をもらしてしまって。
「んんっ……んっ……」
慌てて両手で口を押えると、ジェイドはその手を取り左右に開いた。
「ローラ、なぜ声を押さえる?」
「ここは、私達の家じゃないわ」
ここはエマとギルの家。少し離れてはいるけれどエマたちは部屋にいる、そんな場所で抱き合うなんて……。
それに、ギルは犬だ。耳に入ってしまうだろう。
二人に何をしているのか知られるのは、恥ずかしい。
「外に声が漏れなければいい?」
「そういう事じゃない……の。人の家でこんなっ……ことはっ……」
太腿を滑る手が足の間に入っていき、彼の指が確かめる様に下着の上を何度も往復する。
「こんなになっているのに?」
ジェイドは下着の隙間から指を滑らせ、ワザと水音を立てた。
「ジェイド……あなたいつからそんな風に」
「そんな風に?」
「いじわる……」
初めて体を重ねた日からずっと、彼は優しくゆっくりと気遣いながら抱いてくれていた。
――なのに、今日はどうして?
魔力が解放されて、彼は変わってしまったの?
「ここが嫌なら、今から俺達の屋敷へ転移してもいいけど……ちょっと待って」
額を片手で抱え込み目を閉じたジェイドは小さな声で呪文を唱える。
しばらくするとパッと天を見上げた。
「……ダメだ。今は帰れない」
彼は何か嫌な物を見たように顔を顰めた。
私はそんな彼の行動が不思議でならない。
「どうしてジェイド、さっき魔力は戻ったばかりでしょう?」
「どうして? とはどういう意味?」
ジェイドは私の言っていることが分からず首を傾げる。
「魔法よ、そんなに簡単に魔法は使えるものなの? それに体は? 大丈夫なの?」
ギルは転移魔法は体に負担がかかると言っていた。だからジェイドはあの時気を失ったのだ。耳につけた石が身代わりになってくれていたからこそ、彼はあの程度ですんだはずなのに。
今、同じ魔法を使ったはずのジェイドは、とても余裕のある顔をしている。
「大丈夫、体はなんともない。それから魔法はね、兄さんと一緒にレイズ侯爵家に置いてある魔法書でこっそり学んでいたんだ。いつか役に立てばいいと思って」
そういう言うと少しだけ悲しそうな顔になった。
初めて聞いた彼の幼い頃の話。
――魔力を切望する両親の為に、二人の息子たちはどんなに覚えても使う事の出来ない魔法を、そうと分かっていながら学んだのだろうか。
その事を想うと何だかせつなくなり涙が込み上げてきた。
瞳を潤ませたままジェイドを見上げると、彼は空中に指で文字を書き始めた。
それは最初にエマに見せてもらったあの文字と同じで、煙のように現れスッと消える。
――魔法?
何をしたのだろうと見ると、ジェイドは楽しそうに笑った。
「これで大丈夫。どれだけ声を出しても部屋の外には漏れないから」
そう告げて、ジェイドは私の体の隅々に口づける。
堪え切れず甘い声を上げる私を、悦楽に満ちた瞳で見下ろしながら「ローラ」と囁き腰を下ろした。
「あ……ああっ……」
身体の奥に感じる彼の欲望に、愛されている幸せを感じる。
「ローラ」
ジェイドは何度も名前を呼び、だんだんと動きを速めていく。
激しい律動にベッドの軋む音と、私の嬌声が重なりながら部屋に響く。
「ローラ、もう離さない」
(……ジェイド)
唇を奪いながら、ジェイドは何度も私へ愛を注いでくれた。
これまでの二年間とは違う、彼の激しい愛に、私は何度も果ててしまい、声も枯れはて出なくなって。
「ローラ、愛してる」
(ジェイド……私も愛してる……でも、もう……)
封印されていたのは魔力だけのはず……。
私は何か他にも願ってしまったの?
これが彼の本当の姿だったのだろうか……。
◇◇◇
カーテンの隙間から陽の光が差し込んできた。
――その時、フッと動きを止めたジェイドが私の体に掛布を被せた。
コンコン、とノックの音がしてすぐにバンッと扉が開く。
「ローラ! 見て! ギルが元の姿に……」
部屋に入ってきたエマは、床に落ちているドレスを見て、ぐちゃぐちゃの髪をしてしどけなくベッドにうつ伏せになっている私を確かめる。それから上半身裸で明らかに私の上に乗っているジェイドに視線を移し、笑みを浮かべた。
「まぁ……仲直りできたみたいね。よかったわ。お風呂いつでも入れるから使って。私朝食をギルと作って待っているから」
ふふ、と笑ってエマは部屋を出た。
――パタン。
「ギルの封印も解けたみたいだ。これでローラに力があると証明されたね」
ジェイドは髪を掻き上げると、恥ずかしさに顔を赤くする私を見下ろしながらニッコリと笑った。
これって……?
薄暗い部屋の中、見上げた彼のその新緑の瞳は先ほどと同じきらめきを放ったまま。
「今、俺の中の魔力は全て解放された」
彼は着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
「え?」
「ローラ、君が心を開くことで力は蘇るみたいだ」
「心を開く?」
それって、さっきダメって伝えた事?
「それと、俺の愛かな」
ジェイドはこれまで見た事もない妖艶な笑みを浮かべる。
「愛?」
キレイに結われた髪に彼はスッと指を入れ、ためらいもせず梳き始めた。
「ジェイド?」
髪についていた小さな髪飾りを手に取ると、嬉しそうな顔になる。
「まだ持っていてくれたんだ」
「覚えているの?」
「もちろん、すべて覚えてる」
髪飾りをテーブルに置くと「そうだ」と言いながらかろうじて着ていたドレスを脱がせ床に落とした。
「ドレス、すごく似合ってた」
下着姿の私を見下ろしながらジェイドは言った。
――その言葉は、ドレスを着ている時に聞きたかった。
「でも、今は要らない」
ジェイドはそう言いながら下着の上で指を滑らせた。
もどかしいほどにゆっくりと胸のふくらみを象るように撫でる彼の指先が頂点に触れる。くいっと押し込まれ、たまらず声をもらしてしまって。
「んんっ……んっ……」
慌てて両手で口を押えると、ジェイドはその手を取り左右に開いた。
「ローラ、なぜ声を押さえる?」
「ここは、私達の家じゃないわ」
ここはエマとギルの家。少し離れてはいるけれどエマたちは部屋にいる、そんな場所で抱き合うなんて……。
それに、ギルは犬だ。耳に入ってしまうだろう。
二人に何をしているのか知られるのは、恥ずかしい。
「外に声が漏れなければいい?」
「そういう事じゃない……の。人の家でこんなっ……ことはっ……」
太腿を滑る手が足の間に入っていき、彼の指が確かめる様に下着の上を何度も往復する。
「こんなになっているのに?」
ジェイドは下着の隙間から指を滑らせ、ワザと水音を立てた。
「ジェイド……あなたいつからそんな風に」
「そんな風に?」
「いじわる……」
初めて体を重ねた日からずっと、彼は優しくゆっくりと気遣いながら抱いてくれていた。
――なのに、今日はどうして?
魔力が解放されて、彼は変わってしまったの?
「ここが嫌なら、今から俺達の屋敷へ転移してもいいけど……ちょっと待って」
額を片手で抱え込み目を閉じたジェイドは小さな声で呪文を唱える。
しばらくするとパッと天を見上げた。
「……ダメだ。今は帰れない」
彼は何か嫌な物を見たように顔を顰めた。
私はそんな彼の行動が不思議でならない。
「どうしてジェイド、さっき魔力は戻ったばかりでしょう?」
「どうして? とはどういう意味?」
ジェイドは私の言っていることが分からず首を傾げる。
「魔法よ、そんなに簡単に魔法は使えるものなの? それに体は? 大丈夫なの?」
ギルは転移魔法は体に負担がかかると言っていた。だからジェイドはあの時気を失ったのだ。耳につけた石が身代わりになってくれていたからこそ、彼はあの程度ですんだはずなのに。
今、同じ魔法を使ったはずのジェイドは、とても余裕のある顔をしている。
「大丈夫、体はなんともない。それから魔法はね、兄さんと一緒にレイズ侯爵家に置いてある魔法書でこっそり学んでいたんだ。いつか役に立てばいいと思って」
そういう言うと少しだけ悲しそうな顔になった。
初めて聞いた彼の幼い頃の話。
――魔力を切望する両親の為に、二人の息子たちはどんなに覚えても使う事の出来ない魔法を、そうと分かっていながら学んだのだろうか。
その事を想うと何だかせつなくなり涙が込み上げてきた。
瞳を潤ませたままジェイドを見上げると、彼は空中に指で文字を書き始めた。
それは最初にエマに見せてもらったあの文字と同じで、煙のように現れスッと消える。
――魔法?
何をしたのだろうと見ると、ジェイドは楽しそうに笑った。
「これで大丈夫。どれだけ声を出しても部屋の外には漏れないから」
そう告げて、ジェイドは私の体の隅々に口づける。
堪え切れず甘い声を上げる私を、悦楽に満ちた瞳で見下ろしながら「ローラ」と囁き腰を下ろした。
「あ……ああっ……」
身体の奥に感じる彼の欲望に、愛されている幸せを感じる。
「ローラ」
ジェイドは何度も名前を呼び、だんだんと動きを速めていく。
激しい律動にベッドの軋む音と、私の嬌声が重なりながら部屋に響く。
「ローラ、もう離さない」
(……ジェイド)
唇を奪いながら、ジェイドは何度も私へ愛を注いでくれた。
これまでの二年間とは違う、彼の激しい愛に、私は何度も果ててしまい、声も枯れはて出なくなって。
「ローラ、愛してる」
(ジェイド……私も愛してる……でも、もう……)
封印されていたのは魔力だけのはず……。
私は何か他にも願ってしまったの?
これが彼の本当の姿だったのだろうか……。
◇◇◇
カーテンの隙間から陽の光が差し込んできた。
――その時、フッと動きを止めたジェイドが私の体に掛布を被せた。
コンコン、とノックの音がしてすぐにバンッと扉が開く。
「ローラ! 見て! ギルが元の姿に……」
部屋に入ってきたエマは、床に落ちているドレスを見て、ぐちゃぐちゃの髪をしてしどけなくベッドにうつ伏せになっている私を確かめる。それから上半身裸で明らかに私の上に乗っているジェイドに視線を移し、笑みを浮かべた。
「まぁ……仲直りできたみたいね。よかったわ。お風呂いつでも入れるから使って。私朝食をギルと作って待っているから」
ふふ、と笑ってエマは部屋を出た。
――パタン。
「ギルの封印も解けたみたいだ。これでローラに力があると証明されたね」
ジェイドは髪を掻き上げると、恥ずかしさに顔を赤くする私を見下ろしながらニッコリと笑った。