まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
『お願い……あなたが欲しいの』

 昨夜の彼女の甘い声は、俺をいつも以上に滾らせた。
 ローラは、初めて体を重ねた日に俺が言って欲しいと頼んだ言葉『お願い』と、いつものように口にしただけ。

 ――まさかその言葉に『力』が宿るとは思いもしなかったが……。

 結局、ローラの言葉の力と封印が解かれた事で溢れ出た魔力の所為で、俺の欲望は鎮まることなく、彼女を朝まで抱いてしまった。

「お風呂は一人で入りたいの……」
 腕の中のローラは、小さな声でそう言った。

「どうやって?」
 優しく尋ねながら頬にキスを落とせば、恥じらいながら俺に目を向ける。

「ジェイド、魔法を使えるようになったんでしょう?」
「ああ、使えるよ」
「私を回復させるような魔法はない? あったらお願いしたいのだけれど……ダメ?」

 首を傾げ聞いてくるローラ。
(まさか彼女が回復魔法の存在を知っているなんて……)
 ――もちろん知っている。読んだだけだが、今なら使える自信はある。

 けれど……。

 純真な淡紅色の瞳に見つめられ、やましい気持ちしかない俺は耐えられず目を逸らした。

「……魔法は本で学んだ程度だから、そういう体に直接影響を及ぼすものは、まだ無理だ……と思う」

 ――嘘を吐いてしまった。
 俺はすでに転移魔法というめちゃくちゃ体に影響を及ぼす魔法を使っている。

 ローラは気づくだろうか? そう懸念したが余計だった。

「そうよね。私、魔力があれば何でも出来るのだと思ってしまっていたわ。……ごめんなさい」
「いや、俺の方こそごめん。なるべく早く覚えるから」

 言っている側から罪悪感を覚えるが、仕方ない。
 ごめん、ローラ。回復魔法をかけてもらい、一人で入浴しようと思っていたのだろう。

 けれど俺は、この機会を逃すわけにはいかない。
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