まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
結婚して二年経っているが、俺とローラはこれまで一度も一緒に入浴したことはない。
むろん、屋敷の浴室が狭い訳ではない。その理由は、彼女が人と入浴する事を望まなかったからただそれだけだ。
ローラは長い間、家族や周りの者達から虐げられてきた。
その所為か自分に自信がなく、人を恐れ気持ちを押し殺すところがある。
そんな彼女が結婚してすぐに、お風呂は一人で入りたいと口にした。
ほとんど自分の思う事を話してはくれない彼女の言葉を、俺は今すぐは無理でも、その内一緒に入れるだろうと考え了承した。
抱かれる事も嫌がりはしないし、体を重ねた後に俺から体を拭かれる事を断る事もない。
それなのに、一緒に風呂に入る事だけは嫌う。
その理由は分からなかったが、彼女の前では何事も理解し包み込むような優しい大人の男であるようにしていたから。
無理に進める事はしないと決めていた。
――だが、もう限界だ。きっと魔力が解放されたと同時に俺の理性の扉も開け放たれてしまったのだろう。
――もう、二年も待った。
ローラ、俺は君と……。
「じゃあ、体を拭くタオルを……」
腕の中のローラは俯いたまま、入浴は止めて体を拭くだけにすると話した。
――そんなに嫌?
何がどうして?
「どうして?」
つい、語尾に力が入ってしまう。
「だって……」
俯いたままのローラは、何か言い辛そうに声を弱くした。
「俺が嫌?」
「違うの、嫌じゃなくて……」
ローラの首筋や肩、胸元には俺がつけた無数の赤い痕が見えていた。それを隠そうとシーツをギュッと握りしめ持ち上げている。
――ああ、そうか。
身体を重ねるのはいつも薄暗い部屋だった。体を拭く時も明るくすることはなかった。
けれど浴室となればそれなりに明るく、互いの体の隅々まで見えてしまう。
ローラは明るいところで体を見られる事が恥ずかしいのだろう。
だったら……。
「ローラ、今まで言わなかったけれど、夫婦は、毎日一緒にお風呂に入る決まりがあるんだよ」
俺は平然とした顔で告げた。
「……本当?!」
淡紅色の美しい瞳が驚き見開かれる。
「ああ、そうだ。マックスに聞いたことがあるから間違いはない」
――そんな話は聞いたこともない。
(すまない、マックス)
「マックス様が? サムス公爵様がそう言われるのなら、きっと本当なのね」
(マックスが言うなら……ん? それはどういう意味?)
ローラは俺の言葉より、マックスの言葉を信じるのか?
どうして? 彼は先に結婚しているから?
なんだか自分で言っておきながら複雑な心境になってしまった。
「……でも私、明るいところで体をみられるのは、あなたでも恥ずかしいの」
体を包んでいるシーツをギュッと掴みながら、ローラは顔を赤くする。
(ああ、やっぱり……)
「これまで、さんざん見てきたのに?」
ワザと声を低くし、彼女の耳に口を寄せ囁いた。
「……ジェイド」
俺を見上げるローラの目は、少し顰めている様にも見えた。
――睨んでいる?
淡紅色の瞳は潤みを帯び少し鋭くなっている。
(ああ、ローラ。そんな顔をしてもダメだ、それじゃあ、俺の欲をそそるだけ……)
――何としても一緒に入ろう! この機会を逃してはいけない。
一度入ってしまえば後はそう難しい事じゃない。
「俺に見られるのが恥ずかしいの?」
優しく聞くと、ローラは頷きそのまま俯いた。
「……分かった。じゃあ、ローラは目を閉じているといい」
「え?」
パッと顔を上げたローラの目は見開かれている。
「目を閉じるの? 私が?」
「俺が目を閉じると君を抱きかかえて浴室に入れないだろう? ローラはまだ動けないよね?」
そっと下ろし支えながら立たせてみると、やはりまだ足元がおぼつかない。
「……中に入れば、後は何とか一人で……」
「一人で入って倒れたらどうする?」
心配なんだ、と俺は真剣な眼差しを向ける。
「それに、朝食を作ってくれているエマたちをあまり待たせるわけにもいかない」
そう言うと、ローラはあっ、と小さく声を上げた。
「体を洗うだけだ、他には(今日は)何もしないよ。だから……」
「……はい」
囁くような返事をして、純真なローラは顔を赤くしながら、瞼を閉じた。
シーツを握りしめていた彼女の細い指から力が抜ける。
俺はすぐにシーツを取り払い、裸の彼女を抱いて浴室へと入った。
――浴室の窓から差しこむ朝日が、美しい石で作られた浴槽に張られた湯にあたり、キラキラと輝きを放つ。
浴室の中に立ち込める湯気。
その中で見る彼女のなめらかな肢体はとても綺麗で、俺はなんども立ち上がろうとする欲望を深い呼吸で抑えた。
――さすがに、これ以上は無理だ。それにたった今、何もしないと約束をしたばかり。
違えばもう一緒に入らないと言われてしまいそうだ。
――浴室では、また今度……。
結婚から二年――。
俺はようやく彼女と一緒に風呂に入る事が出来た。
むろん、屋敷の浴室が狭い訳ではない。その理由は、彼女が人と入浴する事を望まなかったからただそれだけだ。
ローラは長い間、家族や周りの者達から虐げられてきた。
その所為か自分に自信がなく、人を恐れ気持ちを押し殺すところがある。
そんな彼女が結婚してすぐに、お風呂は一人で入りたいと口にした。
ほとんど自分の思う事を話してはくれない彼女の言葉を、俺は今すぐは無理でも、その内一緒に入れるだろうと考え了承した。
抱かれる事も嫌がりはしないし、体を重ねた後に俺から体を拭かれる事を断る事もない。
それなのに、一緒に風呂に入る事だけは嫌う。
その理由は分からなかったが、彼女の前では何事も理解し包み込むような優しい大人の男であるようにしていたから。
無理に進める事はしないと決めていた。
――だが、もう限界だ。きっと魔力が解放されたと同時に俺の理性の扉も開け放たれてしまったのだろう。
――もう、二年も待った。
ローラ、俺は君と……。
「じゃあ、体を拭くタオルを……」
腕の中のローラは俯いたまま、入浴は止めて体を拭くだけにすると話した。
――そんなに嫌?
何がどうして?
「どうして?」
つい、語尾に力が入ってしまう。
「だって……」
俯いたままのローラは、何か言い辛そうに声を弱くした。
「俺が嫌?」
「違うの、嫌じゃなくて……」
ローラの首筋や肩、胸元には俺がつけた無数の赤い痕が見えていた。それを隠そうとシーツをギュッと握りしめ持ち上げている。
――ああ、そうか。
身体を重ねるのはいつも薄暗い部屋だった。体を拭く時も明るくすることはなかった。
けれど浴室となればそれなりに明るく、互いの体の隅々まで見えてしまう。
ローラは明るいところで体を見られる事が恥ずかしいのだろう。
だったら……。
「ローラ、今まで言わなかったけれど、夫婦は、毎日一緒にお風呂に入る決まりがあるんだよ」
俺は平然とした顔で告げた。
「……本当?!」
淡紅色の美しい瞳が驚き見開かれる。
「ああ、そうだ。マックスに聞いたことがあるから間違いはない」
――そんな話は聞いたこともない。
(すまない、マックス)
「マックス様が? サムス公爵様がそう言われるのなら、きっと本当なのね」
(マックスが言うなら……ん? それはどういう意味?)
ローラは俺の言葉より、マックスの言葉を信じるのか?
どうして? 彼は先に結婚しているから?
なんだか自分で言っておきながら複雑な心境になってしまった。
「……でも私、明るいところで体をみられるのは、あなたでも恥ずかしいの」
体を包んでいるシーツをギュッと掴みながら、ローラは顔を赤くする。
(ああ、やっぱり……)
「これまで、さんざん見てきたのに?」
ワザと声を低くし、彼女の耳に口を寄せ囁いた。
「……ジェイド」
俺を見上げるローラの目は、少し顰めている様にも見えた。
――睨んでいる?
淡紅色の瞳は潤みを帯び少し鋭くなっている。
(ああ、ローラ。そんな顔をしてもダメだ、それじゃあ、俺の欲をそそるだけ……)
――何としても一緒に入ろう! この機会を逃してはいけない。
一度入ってしまえば後はそう難しい事じゃない。
「俺に見られるのが恥ずかしいの?」
優しく聞くと、ローラは頷きそのまま俯いた。
「……分かった。じゃあ、ローラは目を閉じているといい」
「え?」
パッと顔を上げたローラの目は見開かれている。
「目を閉じるの? 私が?」
「俺が目を閉じると君を抱きかかえて浴室に入れないだろう? ローラはまだ動けないよね?」
そっと下ろし支えながら立たせてみると、やはりまだ足元がおぼつかない。
「……中に入れば、後は何とか一人で……」
「一人で入って倒れたらどうする?」
心配なんだ、と俺は真剣な眼差しを向ける。
「それに、朝食を作ってくれているエマたちをあまり待たせるわけにもいかない」
そう言うと、ローラはあっ、と小さく声を上げた。
「体を洗うだけだ、他には(今日は)何もしないよ。だから……」
「……はい」
囁くような返事をして、純真なローラは顔を赤くしながら、瞼を閉じた。
シーツを握りしめていた彼女の細い指から力が抜ける。
俺はすぐにシーツを取り払い、裸の彼女を抱いて浴室へと入った。
――浴室の窓から差しこむ朝日が、美しい石で作られた浴槽に張られた湯にあたり、キラキラと輝きを放つ。
浴室の中に立ち込める湯気。
その中で見る彼女のなめらかな肢体はとても綺麗で、俺はなんども立ち上がろうとする欲望を深い呼吸で抑えた。
――さすがに、これ以上は無理だ。それにたった今、何もしないと約束をしたばかり。
違えばもう一緒に入らないと言われてしまいそうだ。
――浴室では、また今度……。
結婚から二年――。
俺はようやく彼女と一緒に風呂に入る事が出来た。