まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
16土の加護
居間へと続く扉を開けると、そこに男性が立っていた。
「ジェイドにそっくり……」
私に向けられている優しい新緑の瞳。
スッと通った鼻筋、口角の上がった薄い唇、端正なその顔はジェイドによく似ている。
違う所は髪の長さと色だろう。緩やかに波打つ髪はエマと同じ銀白色。その色は肩のあたりから栗色に変わり腰まで伸びている。
「ローラ、僕が似ているんじゃないよ? ジェイドが僕にそっくりなの」
その声色は『ギル』と同じ穏やかな声。
朝、エマが部屋を訪れた時『ギルが元の姿に……』と言っていた、それならば今目の前にいるこの人は。
「ギル?」
「そうだよ、ローラ」
ギルはジェイドに支えられ立っている私を見てクスクスと笑う。
「とりあえず、席へどうぞ。今朝は僕が作ったんだよ」
そう言うと、キッチンにあるテーブルへ案内してくれた。
香草をまぶし焼かれたお肉の香ばしい匂いが部屋の中に立ち込めている。
「ギルったら、人に戻れたことが嬉しすぎて張り切ったのよ」
お茶を淹れているエマが、テーブルの上に並ぶ料理は、すべてギルが作ったのだと頬を緩ませた。
「わぁ、すごい」
私を椅子に座らせ、その横に腰を下ろしたジェイドはお腹を押さえ「そういえば昨日は何も食べていないな……」と料理に目を輝かせた。
それぞれの席の前には、白い皿に注がれた琥珀色のスープが湯気を立てている。
「手を、指を自在に使える事の幸せったらないんだよ!」
ギルはナイフを片手にし、器用に回して見せると、そのままお肉を切り分け私とジェイドの皿にのせた。
肉の横に蒸した芋と赤いソースを添える。
すべての皿に同じように盛り終えると、ギルは席に着いた。
「料理はギルの方が上手なの」
肩をすくませながら話すエマはとても嬉しそうで、見ている私まで自然と笑みが浮かんだ。
「ローラ、たくさん食べなさいね。昨夜はジェイドに無理をさせられたんでしょう?」
無理をさせられたと言われて顔を赤らめた私の前に、エマは黄色いお茶を置いた。
「これは体力の回復効果のあるお茶よ。それからこっちは、これまで飲んでいたあのお茶の効果を体から出すためのもの」
緑色の爽やかな香りがするお茶を置くとエマは私の顔を覗き込んだ。
「見た所、体に影響はないようだけれど、一応ね」
毎日飲んでいた避妊の効果のあるお茶はそれほど強いものではないけれど、体から抜けきるまでには少し時間がいるとエマは教えてくれた。
「エマ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
私がお礼を述べると、隣に座っているジェイドも深々と頭を下げエマにお礼を告げた。
「二人とも、お礼なんて言わなくていいのよ。それにジェイド、あなたは知らなかった事だわ」
「いえ、それでも」
ジェイドは俺が悪いと首を横に振った。
「あのねジェイド、こう言っては悪いけれど、私達はレイズ侯爵がローラに離縁を言い渡した事はよかったと思っているの」
「それはどうして?」
エマはジェイドの前に紅茶を置くと、ギルの横の席に着いた。
「彼らがローラに話した事やした事は決して許せる事じゃない。でもね、そのおかげで私達はローラとこうして出会えたの」
ギルは、その言葉に大きく頷くと、姿勢を正し真剣な眼差しを私へ向けた。
「ローラ、君に出会えなければ僕は一生犬のままだった。ここに来てくれて、封印を解いてくれてありがとう」
「そんな……私……」
「ローラ、あなたに会えてよかった。ありがとう」
「感謝してもしきれないよ」
エマは胸に手を添えて感謝を表し、ギルは何度も頷いた。
「ジェイドにそっくり……」
私に向けられている優しい新緑の瞳。
スッと通った鼻筋、口角の上がった薄い唇、端正なその顔はジェイドによく似ている。
違う所は髪の長さと色だろう。緩やかに波打つ髪はエマと同じ銀白色。その色は肩のあたりから栗色に変わり腰まで伸びている。
「ローラ、僕が似ているんじゃないよ? ジェイドが僕にそっくりなの」
その声色は『ギル』と同じ穏やかな声。
朝、エマが部屋を訪れた時『ギルが元の姿に……』と言っていた、それならば今目の前にいるこの人は。
「ギル?」
「そうだよ、ローラ」
ギルはジェイドに支えられ立っている私を見てクスクスと笑う。
「とりあえず、席へどうぞ。今朝は僕が作ったんだよ」
そう言うと、キッチンにあるテーブルへ案内してくれた。
香草をまぶし焼かれたお肉の香ばしい匂いが部屋の中に立ち込めている。
「ギルったら、人に戻れたことが嬉しすぎて張り切ったのよ」
お茶を淹れているエマが、テーブルの上に並ぶ料理は、すべてギルが作ったのだと頬を緩ませた。
「わぁ、すごい」
私を椅子に座らせ、その横に腰を下ろしたジェイドはお腹を押さえ「そういえば昨日は何も食べていないな……」と料理に目を輝かせた。
それぞれの席の前には、白い皿に注がれた琥珀色のスープが湯気を立てている。
「手を、指を自在に使える事の幸せったらないんだよ!」
ギルはナイフを片手にし、器用に回して見せると、そのままお肉を切り分け私とジェイドの皿にのせた。
肉の横に蒸した芋と赤いソースを添える。
すべての皿に同じように盛り終えると、ギルは席に着いた。
「料理はギルの方が上手なの」
肩をすくませながら話すエマはとても嬉しそうで、見ている私まで自然と笑みが浮かんだ。
「ローラ、たくさん食べなさいね。昨夜はジェイドに無理をさせられたんでしょう?」
無理をさせられたと言われて顔を赤らめた私の前に、エマは黄色いお茶を置いた。
「これは体力の回復効果のあるお茶よ。それからこっちは、これまで飲んでいたあのお茶の効果を体から出すためのもの」
緑色の爽やかな香りがするお茶を置くとエマは私の顔を覗き込んだ。
「見た所、体に影響はないようだけれど、一応ね」
毎日飲んでいた避妊の効果のあるお茶はそれほど強いものではないけれど、体から抜けきるまでには少し時間がいるとエマは教えてくれた。
「エマ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
私がお礼を述べると、隣に座っているジェイドも深々と頭を下げエマにお礼を告げた。
「二人とも、お礼なんて言わなくていいのよ。それにジェイド、あなたは知らなかった事だわ」
「いえ、それでも」
ジェイドは俺が悪いと首を横に振った。
「あのねジェイド、こう言っては悪いけれど、私達はレイズ侯爵がローラに離縁を言い渡した事はよかったと思っているの」
「それはどうして?」
エマはジェイドの前に紅茶を置くと、ギルの横の席に着いた。
「彼らがローラに話した事やした事は決して許せる事じゃない。でもね、そのおかげで私達はローラとこうして出会えたの」
ギルは、その言葉に大きく頷くと、姿勢を正し真剣な眼差しを私へ向けた。
「ローラ、君に出会えなければ僕は一生犬のままだった。ここに来てくれて、封印を解いてくれてありがとう」
「そんな……私……」
「ローラ、あなたに会えてよかった。ありがとう」
「感謝してもしきれないよ」
エマは胸に手を添えて感謝を表し、ギルは何度も頷いた。