まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜

3 幸せを願うなら

 二人だけの結婚式の日。
 ジェイドは結婚指輪とネックレスをくれた。

 揃いの金の結婚指輪の内側には、二人の名前が刻まれている。

「これはお守りとして常につけていて欲しい。俺が傍にいない時、この石が君を守るから」

 そう言いながらつけてくれたネックレスには、彼の瞳と同じ緑色の石が輝いていた。

「お守り?」
「そう、ほら俺もつけてる」

 ジェイドの耳には私の瞳の色と同じ紅水晶が光を放っている。

 危険な場所へ向かう事もある騎士は、愛する人や家族の髪や瞳の色の石をお守りとして身につけるのだと教えてくれた。

◇◇◇

 ジェイドは私と暮らす為に屋敷を手に入れてくれていた。
 外観は白く塗られ屋根は濃い緑色。
 庭や愛馬ステラの為の馬小屋まである。

 とても綺麗で温かい感じがする家は、まるでジェイドそのもののよう。

「ローラ、気に入ってくれた?」

 何も言わず屋敷を見ていた私に、ジェイドは不安げに尋ねる。

「もちろんよ。ジェイドありがとう」

 お礼を言うと、彼は嬉しそうに笑って私を抱きしめてくれた。

 すぐに二人の暮らしが始まった。

 当たり前だけれど、朝目覚めると横に彼がいる。

「おはよう」と言うと「おはよう」と声が返ってくる。
 たったそれだけの事だが、これまで一人が長かった私は嬉しくて泣いてしまった。
 ジェイドは笑って私の頬に伝わる涙を拭う。

「ローラ、これから毎日泣くつもり?」

 そんな事はないと私は首を横に振った。

(結局、しばらくは毎朝嬉しくて泣いてしまった)

 彼と出会い言われて気づいたけれど、どうやら私はすぐ泣くらしい。


 彼と暮らしていた私の一日は、ほとんど同じだ。

 二人で目覚めた後、私は自分の身なりを整えキッチンに行き朝食を作る。
 食事が終わると仕事に行く彼を見送り、洗濯や掃除といった家事を済ませる。
 彼が帰って来るまでに夕食の支度を済ませて、暗くなってきたら家の明かりを灯す。

 仕事が終わり、愛馬に乗って夫が私の待つ家へと帰って来る。

「ただいま」
「お帰りなさい」

 特別な事は何もない普通の日々。
 けれどそんな風に二人で暮らす毎日が、私にとってこれまで手にする事の出来なかった幸せだった。
< 6 / 121 >

この作品をシェア

pagetop