まだあなたを愛してる〜離縁を望まれ家を出たはずなのに追いかけてきた夫がめちゃめちゃ溺愛してきます〜
エマは呆れたと呟いて、見つめ合い笑っているレイズ夫妻の姿を水晶玉から消した。
ただの透明な玉になった水晶玉を見つめながら、私は考えていた。
――水晶玉の中に映っていた二人は、離縁を告げてしまった事を後悔し、ジェイドが私を連れ帰って来る事を願ってくれていた。
――謝りたいと、結婚指輪を返したいと言ってくれている。
――レイズ夫妻は、息子であるジェイドにも偽りの言葉を並べ、私にもいくつもの嘘を吐いた。
そんな両親を信じられなくなり、嫌悪するジェイドの気持ちは分かるつもりだ。
信頼し、愛していたからこそ余計にされた事が不快に思えるのだろう。
けれどレイズ侯爵夫妻がした事は、ジェイドを想っての事。親が子の幸せを願っての事だったのだと、私は思う。
「あのね、ジェイド」
きっと、甘い考えだと言われるだろう。
それでも今の気持ちを素直に伝えよう、そう思い彼を見つめた。
「なに?」
「ジェイドは私を迎えに来てくれたのでしょう?」
「そうだよ。けれどもう戻るつもりはない。ローラ、このまま違う場所に行き、そこで二人で暮らそう。俺は騎士だから仕事はどこにでもある。でも、すぐに家を手に入れる事は難しい、しばらくは家を借りて」
「ダメよジェイド。あなたの……私達の家に帰りましょう」
彼の手を握り返し、強く見つめながら私が告げると、ジェイドは驚いたように何度も瞬きをした。
「ローラ、俺はレイズの名を返し両親との縁を切るつもりでいるんだ」
「ジェイド、そんな事言わないで」
「なぜ? 彼らは君を騙し、何もかも奪った。それに俺は昨夜見たんだ。俺達の家の物を運び出して、彼らはまるで泥棒……」
「ダメ」
それ以上ご両親の事を悪く言って欲しくないと、私はジェイドの唇に指を添えた。
ジェイドは私がそういう行動をするとは思わなかったのか目を丸くする。
「私、あなたとの結婚が決まった時、アーソイル公爵邸にいたコックのおじさんに聞いたの」
別荘から公爵邸に戻った私に、こっそりと厨房を使わせてくれていた優しいコックのおじさんがいたと話した。
「まぁ、あの公爵邸に優しい人もいたのね」
エマの言葉に頷いて、私は話を続けた。
「結婚した女の役目は子を持つ事で、二年の間に子を持てなければ離縁されると教えてくれたの。レイズ夫妻は確かに私に嘘を言われたわ。けれど子供を理由に離縁を告げられた事は間違ってはいないの」
ジェイドは私の手を取ると首を横に振った。
「ローラ、彼らは子供を欲しい訳じゃない、魔力を欲しいだけだ。たまたまクリスタが何を思ったか俺と結婚してもいいと言い出したから、俺達を別れさせようと考えたんだ。直接俺に話したが、無駄だった。だから、君に話したんだよ。君が断われないと分かっていながら。それにあんな物を……」
「たとえそうであっても、あの時、別れを決めたのは私なの。ご両親ばかりが悪い訳じゃないわ」
「違う、君は何も悪くない。騙した彼らが悪い、俺はそんな彼らを許す事は出来ない。ローラ、俺は両親よりも君の方が大切なんだ」
私を見る新緑の目が切なく歪む。
「ジェイド……」
――私達が出会ってから、三年。
結婚し家族となってからは、まだ二年を過ぎたばかり。
それなのに彼は、生まれてから一緒だった両親よりも私を大切だと言ってくれている。
――私を……。
――すごく嬉しい。
けれど……。
私の為にご両親を悪く思うようなことはあって欲しくない。
ただの透明な玉になった水晶玉を見つめながら、私は考えていた。
――水晶玉の中に映っていた二人は、離縁を告げてしまった事を後悔し、ジェイドが私を連れ帰って来る事を願ってくれていた。
――謝りたいと、結婚指輪を返したいと言ってくれている。
――レイズ夫妻は、息子であるジェイドにも偽りの言葉を並べ、私にもいくつもの嘘を吐いた。
そんな両親を信じられなくなり、嫌悪するジェイドの気持ちは分かるつもりだ。
信頼し、愛していたからこそ余計にされた事が不快に思えるのだろう。
けれどレイズ侯爵夫妻がした事は、ジェイドを想っての事。親が子の幸せを願っての事だったのだと、私は思う。
「あのね、ジェイド」
きっと、甘い考えだと言われるだろう。
それでも今の気持ちを素直に伝えよう、そう思い彼を見つめた。
「なに?」
「ジェイドは私を迎えに来てくれたのでしょう?」
「そうだよ。けれどもう戻るつもりはない。ローラ、このまま違う場所に行き、そこで二人で暮らそう。俺は騎士だから仕事はどこにでもある。でも、すぐに家を手に入れる事は難しい、しばらくは家を借りて」
「ダメよジェイド。あなたの……私達の家に帰りましょう」
彼の手を握り返し、強く見つめながら私が告げると、ジェイドは驚いたように何度も瞬きをした。
「ローラ、俺はレイズの名を返し両親との縁を切るつもりでいるんだ」
「ジェイド、そんな事言わないで」
「なぜ? 彼らは君を騙し、何もかも奪った。それに俺は昨夜見たんだ。俺達の家の物を運び出して、彼らはまるで泥棒……」
「ダメ」
それ以上ご両親の事を悪く言って欲しくないと、私はジェイドの唇に指を添えた。
ジェイドは私がそういう行動をするとは思わなかったのか目を丸くする。
「私、あなたとの結婚が決まった時、アーソイル公爵邸にいたコックのおじさんに聞いたの」
別荘から公爵邸に戻った私に、こっそりと厨房を使わせてくれていた優しいコックのおじさんがいたと話した。
「まぁ、あの公爵邸に優しい人もいたのね」
エマの言葉に頷いて、私は話を続けた。
「結婚した女の役目は子を持つ事で、二年の間に子を持てなければ離縁されると教えてくれたの。レイズ夫妻は確かに私に嘘を言われたわ。けれど子供を理由に離縁を告げられた事は間違ってはいないの」
ジェイドは私の手を取ると首を横に振った。
「ローラ、彼らは子供を欲しい訳じゃない、魔力を欲しいだけだ。たまたまクリスタが何を思ったか俺と結婚してもいいと言い出したから、俺達を別れさせようと考えたんだ。直接俺に話したが、無駄だった。だから、君に話したんだよ。君が断われないと分かっていながら。それにあんな物を……」
「たとえそうであっても、あの時、別れを決めたのは私なの。ご両親ばかりが悪い訳じゃないわ」
「違う、君は何も悪くない。騙した彼らが悪い、俺はそんな彼らを許す事は出来ない。ローラ、俺は両親よりも君の方が大切なんだ」
私を見る新緑の目が切なく歪む。
「ジェイド……」
――私達が出会ってから、三年。
結婚し家族となってからは、まだ二年を過ぎたばかり。
それなのに彼は、生まれてから一緒だった両親よりも私を大切だと言ってくれている。
――私を……。
――すごく嬉しい。
けれど……。
私の為にご両親を悪く思うようなことはあって欲しくない。